なぜ、富裕層の「相続」は20年前に勝負がつくと言われるのか?

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

 2015年1月から実施された相続税の税制改正によって、長年意識されなかった相続税が一躍注目されるようになった。課税を免除される基礎控除額が引き下げられたためだが、たとえば妻と子供二人が相続人だった場合、8000万円使えた基礎控除額が一気に4800万円に減額されてしまった。

 普通の人も相続税を意識せざるを得なくなったわけだが、これが億単位の金融資産や不動産資産を持つ富裕層となると事態はさらに深刻だ。いままで50%(3億円超)の最高税率だったのが、税制改正によって55%(6億円超)に引き上げられたのだ。しかも、こうした資産に対する課税強化は今後も続きそうだ。

定番は「収益不動産」への投資で負債を作る方法

 そもそも相続税対策でよく知られているのは、相続財産に匹敵するような「負債」を不動産投資などでつくり、財産と負債で相殺させて相続資産を実質的にゼロにする方法がある。あるいは、時間をかけて年間の非課税枠ぎりぎりの「贈与」を繰り返す方法などもある。

 最も一般的な方法としては、アパート・マンション1棟、あるいは区分所有マンションを賃貸目的で購入する方法だ。本来、賃貸収入=インカムゲインを目的に購入する方法だが、ローンで購入することで負債を作る。

 本来、現金を不動産に換えるだけでも相続税路線価の評価額は地価公示価格の8割に下がるなど、メリットが大きい。さらに三大都市圏の市街化区域で500㎡以上あれば、最大65%の減価が受けられる「広大地評価」なども受けられる。不動産で相続するのが一番合理的ともいえる。

収益不動産投資+プライベートカンパニーが相続税対策の切り札

 ところが、この方法にはひとつ問題がある。相続税というのは、いつ相続が発生するかわからないことだ。自分がいつ亡くなるかはわからないし、親の死亡時期を予想して相続税対策をするのも難しい。かといって富裕層の場合、準備をしないと高額の納税になってしまう。

 収益不動産に投資してローンを組んでも時間の経過によってローンが返済され、実際に相続が発生したころには負債が少なくなっているケースもある。

 そこで、お勧めしたいのが「不動産投資+プライベートカンパニー(資産管理会社)」という相続税対策だ。簡単に言うと、自分の資産を私的に作った法人に譲渡あるいは現物出資して「所有権」を移転させてしまう方法。不動産管理だけを行う「不動産管理会社」とは異なり、収益不動産に加えて保有する有価証券なども、ゆくゆくは資産管理会社に移転させていく。その方法としては――

①譲渡……金融機関からローンを借りて現金で一括払いする方法。

②現物出資……現物出資してもらい代わりに株式を発行する。収益不動産からの利益などは配当という形で還元する。

③分割払い……市場価格に近い形で分割払いして行く。

相続資産の評価額をいかに圧縮できるかがポイント

 不動産を譲渡して現金を受け取った場合は、生前贈与も簡単になり、経費としてモノやサービスを購入することもできる。現物出資した場合は、プライベートカンパニーの「株式」を保有することになり、この株式が相続税の対象になる。

 株式の場合、現金などに比べて評価額を圧縮できるメリットがある。相続時に法人の正味資産から算出する「純資産価額方式」、株式上場している同業者の株価水準などによって判断される「類似業種比準価額方式」のどちらかで株価を評価することになるのだが、不動産のままで相続するよりはずっと評価額を圧縮できる可能性があるのだ。

 ただし、この方法には時間がかかる。昔から、富裕層は相続税対策を始めるなら遅くとも10年前、可能であれば20年前から準備するのがベストと言われてきたのもそのためだ。

 いずれにしても富裕層の場合、今後さらに資産に対する課税強化が予想されるなかで、可能な限り時間をかけて「不動産投資+プライベートカンパニー」のスタイルで相続税対策をすることがお勧めだ。少なくとも、20年前から不動産投資を始めるなど準備を進めておきたい。この準備をしておくかどうかで相続税の額は大きく異なると考えていい。税理士など、専門家のアドバイスを受けて進めることも大切だ。

 

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