日本経済から見る都心部の不動産投資

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(写真=PIXTA)

 2016年4月28日、東京株式市場の前引け後に日銀が金融政策の現状維持を決定したことが伝わると、為替市場で1ドル=108円台まで円高が進み、日経平均も後場マイナスに転じた。

 1万6,700円台まで急落したのち下げ渋る場面も見られたが、大引けの日経平均は前日比624.44円安の1万6,666.05円となった。業種別では、全33業種がマイナスとなり、証券が8%近く下落したほか、銀行業、海運業、保険業などがきつい下げとなった。

 このような状況のなかで、日本の不動産投資はどのような状況にあるのだろうか。マイナス金利により不動産投資が注目されている今、日本の経済から不動産市場の動向を挙げてみよう。

最近のJ-REIT市況

 一方、不動産市況をあらわすREIT指数を見てみると、28日は株価と歩調を合わせ、日銀の現状維持発表後は一時的に値を下げた。しかし、その後盛り返し、終値は1,924.44だった。

 最近のREITの動きをみる限り、株価や為替市場の動きとはあまり相関性がないことが見受けられる。

 今後の長期的な不動産の動向を考えるうえで、将来の人口と世帯数の動静は見ておく必要があるだろう。

 日本の人口はすでに2010年にピークアウトしており、さらに世帯数は2019年を境に減少に転じる見込みである。(総務省統計局『平成27年国勢調査人口速報集計』より)。人口減の影響がすぐに世帯数の減少にはつながらず、数年のタイムラグを置いて表面化することがうかがえる。

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 しかし、東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)にフォーカスしてみると、今後しばらくは人口の流入は続くと予想されている。その中でも人口増加となるのは中央区、江東区、港区と予測されている。さらに視野を広げて世界の人口を見てみよう。国際連合の推計によると、2015年の日本の人口は世界第10位となっている。そして人口上位20カ国の中で、2010年から2015年の人口増減値が減少しているのは日本だけだ。

 次に、マクロ経済の観点から日本経済を紐解いてみよう。

 4月28日の黒田日銀総裁の強気な記者会見とは裏腹に、足元の景気は力強さを欠いている。内閣府は4月18日、1~3月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表するが、民間調査機関15社の予測をまとめたところ、1~3月期の実質GDPは前期比年率0.35%増にとどまっている。2017年4月に消費税率を10%に上げるかどうかを決める重要な判断材料になるため、注目を集めているのだ。

 2015年10~12月期は1.1%減のマイナス成長、翌2016年1~3月期はうるう年による日数増で約1.2%分の押し上げがあるため、これを除けば2期連続のマイナス成長となった。それでも他の国と比較して、日本の経済規模は絶対的に大きく、2020年時点でもアメリカ、中国に続いて第3位の位置を保つ見通しだ。もちろんこの金額は、投資対象としては無視しえない規模になる。

 また、米連邦準備理事会(FRB)は27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送った。会合後の声明では「米経済は減速した」と景気判断を引き下げ、個人消費の鈍化などに懸念を示した。一方、海外経済や金融市場のリスクは後退したとの見方をにじませ、先行きの利上げ再開には余地を残した。

 日米両国の中央銀行から当面の金融政策が発表され、2国間の金利の差は大きな変化がなかった。したがって今後も長期金利は低位安定状態が継続し、その状況の中で少しでも高い利回りを求める、いわゆる世界のイールドハンターたちは、日本の不動産に注目しているのだ。

 10年物長期国債のマイナス金利の常態化により、J-REITとのイールドギャップの差はとても魅力的だ。また、低コストで資金調達ができるなど、マイナス金利の恩恵をフルに享受しているのがREITの現状である。

日本の不動産市況の概況

 2013年にアベノミクスが始まって以降の、日本の不動産に対する海外投資家の投資動向を振り返り、挙げてみよう。

 アジア非上場不動産投資家協会(ANREV)によると、アジア太平洋地域の中で2016年に最も投資したい対象は、2年連続で東京のオフィス市場という結果が出た。複数回答だが、全体の56.5%の人が東京オフィス市場に投資したいと回答している。

 証券化対象不動産の購入状況に焦点をあててみると、2013年はJ-REITが2兆円以上の資産を取得し、買い手としては圧倒的な強さを見せた。しかし、2014年は私募REITや国内外の富裕層、事業会社が台頭し、プロでも物件を買うことが難しい状況が続いている。用途別にみた証券化対象不動産の取得実績を時系列で見ていくと、オフィス系の物件が全体の3分の1を占め、J-REITの中心を占めている。

 また、2020年の東京オリンピック開催も確実にREIT価格を押し上げる。2015年3月末のREITによる保有物件のうち、東京23区に所在する物件は約56%、東京都を含む関東全体では約75%になる。このように、オリンピック効果によるREITの保有物件の資産価値の向上や賃料の向上を通じて、REIT市場は活況を呈している。

 オリンピックを控え、東京の都市機能を向上させるため、道路や鉄道を中心としたインフラ整備が進められており、REITが保有する物件も恩恵を受けることが予想される。

 新宿駅南口の超高層ビルとバスターミナルの建設(通称バスタ)、山手線田町~品川間の旧田町電車区跡地の新駅建設(2020年までに暫定開業予定)、日比谷線霞が関~神谷町間の虎ノ門3丁目周辺の新駅開業と周辺の再開発、渋谷駅周辺の大規模再開発など、大きなプロジェクトが目白押しだ。また最近の海外からのインバウンド数の上昇に伴い、ホテル系のREITも要注目だ。2020年のオリンピックの影響もあり、国外からの旅行者が急増しているため、ホテル投資は活況を呈しているのだ。

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(写真=PIXTA)

 また、金融機関の貸し出し意欲の旺盛さは不動産価格の上昇理由の一つで、無視できない要因だ。2000年以降、不動産に対しては最も緩和された状態で、リーマンショック時の2007年時に匹敵している。オーバーバンキング状態は市場に広く認識され、金融機関のスプレッドは削られ、金融機関側に有利な各種コベナンツ条項が緩い状態である。ただ、2007年当時と異なる点は外資系金融機関が参入していないということだ。Commercial Mortgage Backed Securities (CMBS)が凍結され、投資銀行系は参入意欲が低いのが現状といえよう。

 そのような日本の賃貸オフィス市場で、東京都区部が延べ床面積当たりで約60%を占め、圧倒的な市場規模を持っている。中でもオフィス需要は、都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)に集中している。

 REITの投資口価格(株価に相当)の決定要因の主なものは、オフィスの空室率と賃料だ。

 都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィスの平均募集賃料は上昇を続けており、27カ月連続となっている。新築ビルを中心に需要が底堅い傾向が見受けられた。また、不動産投資市場の浮上・加熱で地方においても流動性が高まっており、中でも、札幌・仙台・福岡が注目されている。

今後の東京のオフィス需要

 足元で進んでいる市況の改善を背景に、今後J-REITオフィス物件の賃料の引き上げ交渉が実現することが予想される。これは、REIT価格にとっては当然プラスの要因になる。

 空室率も、2017年までは低い率のまま進むことが予想されるが、2018年以降、特に2019年は23区でかなり大規模なオフィス供給が行われる予定なので、このタイミングで投資家は注意が必要だ。

 J-REIT市場は、目先、円高や原油安など世界景気に対する先行き不透明感によっては値動きが大きくなる可能性もある。しかし、相対的な配当利回りの高さや、J-REITによる保有物件の賃料上昇に伴う配当金増加期待を背景に、引き続き上昇基調で推移する展開となるだろう。

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