スクイーズアウトとは? 今から考えておきたい事業承継

Squeeze-out
(写真=PIXTA)

 現経営者から後継者に事業承継する場合、いかにして後継者へ株式を集中させるかが課題となる。特に会社の株主を大株主のみにする場合、少数株主の存在が大きな障壁になってしまう。しかし、「スクイーズアウト」という手法を用いることによって、少数株主を強制的に追い出すことが可能だ。

 今回はスクイーズアウトとは何か、さらに最近実際にあった事例を踏まえて検討すべき対策を紹介する。

スクイーズアウトとは何か?

 スクイーズアウト(Squeeze-out)とは「締め出す」という意味があり、現金を対価として少数株主の株式を強制的に買い取って、特定の株主のみを会社の株主とすることをいう。

 したがって、株主が分散してしまった会社であっても、株主一人一人と個別に買い取り交渉をする必要がない。「私は絶対に売りたくない」など株式譲渡交渉に応じてくれない場合があっても、法令を遵守しながら強制的に少数株主を追い出すことができるのだ。

 スクイーズアウトの具体的手法はいくつかあるものの、実務上は「全部取得条項付種類株式」を用いたものが多い。これは定款変更を行って、全ての普通株式を全部取得条項付種類株式という特殊な株式に強制変更し、会社の一存で少数株主をスクイーズアウトするものだ。

 これが従来からの手法だが、2015年施行の改正会社法の「特別支配株主の株式等売渡請求(会社法179条)」によって、議決権の10分の9以上を保有する株主は、残りの10分の1の少数株主に通知書を送るだけで、強制的に少数株主の株式を買い取れるようになった。これは最近の事例だと、日本生命保険相互会社(日本生命)が三井生命保険株式会社(三井生命)の株式を買収した際に行った手法だ。この事例を中心に以下に解説する。

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日本企業で行われたスクイーズアウトの事例(日本生命、カネボウ)

 2015年9月11日に日本生命と三井生命が経営統合を発表した。統合は、まず日本生命が三井生命株式の公開買い付けを行い、公開買い付け成立後にスクイーズアウトの手続きにより日本生命が三井生命の全株式を取得する。その後、三井生命の大株主である三井グループ(三井住友銀行など)が、統合後の会社における総議決権の約15%の株式を取得する。

 このときの計画としては、公開買い付けの後に定款変更を行い、全ての普通株式を「全部取得条項付種類株式」という株式に変え、株式全部を株主から強制的に買い取る予定だった。実際、この公開買い付けで日本生命が三井生命の議決権の90%以上の株式を買収した。

 しかし、数%を保有するシンガポールの投資会社が株価に納得せず、売却に応じない事態となった。そこで日本生命は、先の2015年施行の改正会社法の「特別支配株主の株式等売渡請求(会社法179条)」によるスクイーズアウトの手法を用い、このシンガポールの投資会社からの強制買い取りに乗り出した。まず、公開買い付けで協力的株主から議決権の90%以上の株式を買い集めた。これにより、日本生命はシンガポールの投資会社を含む残りの少数株主に通知書を送るだけで強制的にその少数株式を買い取れることになった。

 しかし、強制買い取りをされた少数株主は、その買い取り価格に不服があれば裁判所に価格決定申し立てをすることにより、裁判所で株式の買い取り価格を判断してもらうことになる。

 実際、別の事例だが、旧カネボウが行った営業譲渡決議の反対株主をスクイーズアウトした。このとき1株162円で公開買い付けを行ったが、この株価に異議を唱えた株主と株価争いになり裁判で価格決定することになった。1株あたりの株価が数十円から千数百円までとなるさまざまな株価鑑定書が取り上げられたが、裁判所は1株360円と決定した。結果的に、公開買い付けに応じた株主は1株162円、反対して裁判所に申し立てをした株主は1株360円で売却するという結末になった。
 
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事業承継を見据えて今検討すべきこと

 上述の少数株主排除策は、後継者に株式を集中させるという目的を達成できるメリットはある。しかし、排除された少数株主が買い取り価格に納得しない場合などで裁判に発展するケースもある。さらに、株主総会決議の取り消しの訴えのリスクなども避けるためには、慌てて少数株主を排除するのではなく、スクイーズアウトから事業承継を実行に移すまで1年以上の期間を置いたほうが良いといえる。

 また、事業承継を考える際に、少数株主の権利については十分に理解しておく必要がある。相続税対策で自社株を分散させた会社は多いはずだが、株式市場が発達した今、株主としての権利を主張される可能性があることを念頭に置くべきである。この際、スクイーズアウトによって一定の時期までに株主構成を適正化するという選択肢も入れると良いだろう。

 これを機会に事業承継を見据えたステークホルダーの調整、特に「少数株主をどう調整するか?」を一度検討されることをおすすめする。

(提供:株式会社バード財産コンサルタンツ)

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