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トランプ大統領で米国の富裕層はどうするのか 増税強化への対策

2016,06,21

america(写真=PIXTA)

トランプ氏対ヒラリー氏という構図が現実味を帯びてきた今回の米国大統領選。焦点となっているのは“格差”と、各候補の税制改革だ。ポピュリズムに偏りがちな大統領選で、よくやり玉に挙げられるのが富裕層だが、自身の資産防衛や節税に対してどのように備えているのだろうか。

トランプ氏は所得税・法人税の大幅減税で中間層にアピール、しかし内容は富裕層優遇

 2015年9月に発表したトランプ氏の政策には、法人や個人の幅広い減税が盛り込まれている。個人に対する連邦所得税率を現在の7段階から4段階に簡素化し、所得税を支払う必要がない最低所得層を拡大すると同時に、最高税率を39.6%から25%に引き下げる内容を示している。

 「アメリカ国民の大半、中間層に大きな減税を提供する」とアピールし、「制度の簡素化と減税で個人消費や投資を喚起し、経済成長を最大化する」としている。低所得層の所得税をゼロにすると公約しているが、現行制度でもアメリカ国民の45%は所得税を払っていない。トランプ氏の税制改革案では、この層が50%に増えるだけなので、中間層への減税といっても大きな内容ではない。

 これに対し、高所得層は最高税率が現行の39.6%から25%に引き下げられることで、減税効果が圧倒的に大きい。また法人税も現在の35%から15%に大幅に引き下げ、遺産税(Estate Tax)も廃止すると掲げている。これも、会社経営者や多額の資産を有する富裕層に対して有利な内容と批判されている。

 トランプ氏はこうした減税の財源は、ヘッジファンドのマネージャーが成功報酬として受け取る「キャリードインタレスト」に対する税制上での優遇措置を撤廃するなど税の抜け穴をふさぐほか、さまざまな税制控除をなくし、アメリカ企業が海外に滞留させている利益にも一時課税することなどで確保すると説明している。だが、具体的な方法や数字までは明らかにしていない。さらに専門家からは財政難を招くという批判があり、実行可能性が疑問視されている。

税制改革に対するトランプ氏の意見は迷走

 批判を察知したのか、トランプ氏は共和党の候補指名獲得を確実にした後の5月8日、「富裕層の税率を引き上げるべきであり、より中間層に配慮する税制にするだろう」との認識を示した。

 ところが翌日になると、「富裕層の税率が私の(従来の)税制改正案よりも高くなるかもしれないが、それでも、富裕層が払う税金は今より少なくなる」と釈明している。さらに、自身が富豪であるトランプ氏が、候補者の中で唯一税務申告を公表していないことにも、疑念が投げかけられている。

富裕層にとってアメリカはタックスヘイブン? 節税対策は既に万全

 実はアメリカの富裕層には節税手法があり、超富裕層の方が一般庶民より税率を低くすることが可能という矛盾がある。

 例えば、アメリカの著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は2011年のNYタイムズ紙への寄稿で、「私の昨年の納税額は所得の17.4%。私のオフィスで働く人たちの税率の平均は36%だった」など、富裕層を優遇している税制の実態を暴露し、政権に対し富裕層への増税を主張している。プライベート・エクイティで財をなした2012年の共和党大統領候補ミット・ロムニー氏も、2011年の所得税率は13.9%と低い。

 これは超富裕層の所得の大部分がキャピタル・ゲインや配当金であることが理由だ。長期キャピタル・ゲインや配当金の一部、キャリードインタレストの課税率は15%で、通常の所得にかかる税率よりずっと低い。デラウェア州に会社を設立すれば租税回避の抜け道があるなど、アメリカは富裕層にとって『タックスヘイブン』に近い。昨今騒がれているパナマ文書も、意外にアメリカの大富豪が少ないのはこうした背景によるものとされている。

サンダース氏の躍進が富裕層にとって不安材料

 富裕層にとっては、トランプ氏の政策よりも、サンダース氏の躍進のほうが厄介かもしれない。格差是正を中心課題に社会主義的政策を掲げるサンダース氏は、税制の抜け道を使っている企業への課税や、富裕層への大幅増税、金融機関の解体を主張している。

 サンダース氏には若者を中心に熱狂的な支持者が多く、たとえヒラリー氏が民主党候補に指名されたとしても、ヒラリー氏に投票しないかトランプ氏に寝返る可能性があるとも言われている。これを不安視したヒラリー陣営が、サンダース氏の支持者を取り込むためにサンダース氏寄りの政策を掲げるかもしれない。そうなれば富裕層・大企業にとってリスクとなるだろう。

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