経済・経営のニュースを取り上げる、百計ONLINE。

経営NEWS-百年の計

米利上げのポイントは? 賃金上昇率、生産性の伸び、企業収益に注目


SONY DSC
(写真=PIXTA)

 「米経済は厳冬の影響から緩やかに持ち直しており、年内利上げに耐えるほど力強い公算が大きい」との認識を示した6月17日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明を受け、多くのエコノミストは「今年9月」の利上げ予想を据え置いた。こうしたなか、利上げの決定要因として賃金上昇率、生産性の伸び、企業収益に注目が集まっている。

 利上げ時期については、独アリアンツのモハメド・エラリアン首席経済顧問、BNPパリバの分析チーム、パンテオン・マクロエコノミクスのイアン・シェファードソン氏など著名エコノミストが「依然9月説が有力」だとしており、「利上げは9月を予想するが、時期ではなく、道筋が大事」(有力な米連邦準備制度理事会〈FRB〉ウォッチャーのティム・デューイ オレゴン大学教授)との論調が支配的になってきている。

 では、利上げの道筋で初回の引き上げに決定的役割を果たす要因は何か。まず、ジャネット・イエレンFRB議長自身がFOMC後の記者会見で挙げたポイントは、賃金上昇率だ。同議長は、「賃金上昇率はまだ低いレベルにあるものの、強い上昇の暫定的な兆候が見られる」と前置きした上で、「まだ確実ではないが、希望的なサインだ」と述べた。

 FRBは利上げに際して、インフレ率2%の目標へ確実に近づきつつあると自信を持つことが必要とされる。賃金上昇率は、インフレ率上昇に不可欠の要素であるため、イエレン議長が特に言及したのである。ちなみに、FRBの予測によると、インフレ率は2015年に年率0.8%上昇、2016年には1.9%上昇することが見込まれる。過去3年、物価上昇率の予測を外し続けたFRBだが、賃金上昇の兆候は強力な「援軍」といえよう。

 一方、懸念される要因は生産性の上昇率減速である。有力なFRBウォッチャーである『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のジョン・ヒルゼンラス記者は、「生産性の成長は米金融政策にとって、ますます重要になってきている」と指摘。「以前は高かった米国の生産性上昇率は、金融危機後に年率平均1.4%まで下落し、過去2年間は0.5%と、情けない状況だ。もしこれが金融危機後の投資減退が原因だとすると、やがて生産性上昇率は上向くだろう。だが、生産性の低下が金融危機以前からすでに進行中だったとすると、生産性上昇率はこれ以上伸びず、FRBの金利政策が影響を受ける」と言明した。

 生産性上昇率がこれ以上改善しないとなれば、ローレンス・サマーズ元米財務長官が唱える米経済の長期停滞論が正しいという論拠が増えたことになり、利上げのペースはより緩慢なものになることが予想される。

 FRBの利上げ決断の重要な別要因として「企業収益」を挙げるのは、ウェルズ・キャピタル・マネジメントの首席投資責任者(CIO)であるジム・ポールセン氏だ。彼は、「FRBが金融引き締めに向かう際は、伝統的に企業収益が上向いている頃を見計らって利上げを実行していた。だが、企業の業績が勢いのある上昇タイミングで待ちすぎて、パフォーマンスが横ばい傾向になった今、FRBは『出口信号』を通り過ぎてしまったのかもしれない」と論じた。ポールセン氏はさらに、「FRBは企業収益改善のクッションなしに利上げを始めることになる」と警鐘を鳴らした。

 利上げが遅過ぎた可能性に加え、反対に利上げが早過ぎて景気が冷えるシナリオも根強くささやかれている。1937年に、まだ回復途上の米経済をFRBの金融引き締めが冷やした際の「亡霊」が出ないかというのだ。

 利上げの道筋は、さながら地雷原だ。一部のアナリストは、「ギリシャ危機が再発し、米利上げのタイミングと重なった場合、市場心理が冷える」としている。

 他方、利上げへの「追い風」もある。米政府の景気刺激策が大規模でなくなったことが、米経済の低成長の一因となっているが、それが米経済の急すぎる成長を抑え、FRBにとっては緩やかな利上げの道筋を描くことを可能にさせる効果があると、ハバフォード・トラストのハンク・スミス氏は言う。さらにイエレン議長は「ドル高の米経済に対する悪影響は限定的」との見方を示し、為替レートが利上げの決定要因になることはないと示唆している。

 

TOP