第二回広島開催レポート

守るべきもの、捨てるべきもの、商品力とは?

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[パネリスト]株式会社ういろう
代表取締役 外郎 武

先代からの事業継承時に抱える百年企業ならではの問題、それは伝統と革新のバランス。何を取捨選択するかを見極める力は、創業者への想いを大切にする尊敬の念が根底にあった。

小田原に存続する最古の企業で創業650年、薬の製造販売とお菓子の<ういろう>で有名な第25代当主、外郎武氏が創業当時から守ってきたもの、そして自身のこだわりを語った。

「やはり創業者の想いを守っていくというのは当然のことです。地域の健康のために薬を作り、元々、国賓をもてなすために作られたお菓子は、もてなしの気持ちで手渡しする。ですから薬も菓子も小田原以外で販売せず、自分たちの目の届く範囲で、手間ひまかけて一生懸命作るということを守っています。

一方で、敢えて私が捨てたものは社長室。社長室の椅子に座ると、報告が上がったものしか知り得ず現場が分からない。今の私の席は事務室にあります。電話が鳴り、店先の声も聞こえ、出入り業者さんの顔を見て、現場肌で判断できる。捨てた社長室は資料室にしました。」

続いて語ったのは田中食品、田中社長。第二次大戦の壮絶な時代を被爆しながらも生き延びた先代から言われた言葉で、代を預かる覚悟ができたという。

「終戦後に母が過労で亡くなった後、弱って倒れた親父が私に言った言葉があります。<家族、会社、社員を守らないかん。これからしっかり頑張って、商品を大事にしてくれよ>と。私が4代目を引き継ぐ時でした。その瞬間<逃げる、やめる、甘える、できない>などの言葉を捨て、覚悟を決めました。やるからには徹底してやる。そうしないと、創業者や歴代の先輩に失礼だと思ったからです。

<爆弾の落ちてこないところで寝られるのはどれだけ幸せなことか。金が無い、ものが無いとか何が不幸や!>。戦争を体験した親父からの厳しいながらも愛情のある言葉の想いを大切に守っています。」

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[コメンテーター]中国新聞社
経済部長兼論説委員 吉原圭介

虎屋本舗は、餃子そっくりの大福<そっくりスイーツ>が話題となり、おみやげグランプリで日本一に輝くなど、新たなチャレンジを積極的に取り組んでいる。

「入社したての右も左も分からない頃、周囲からの<大変ですね。>と言われる言葉自体が重圧になりました。この重圧を打開するのに、正攻法ではありませんが、敢えて伝統を捨て自分の好きなことをしました。社員と共にチャレンジし続けたい。そう思うと何を守るのかが決まり、捨てるものが見えてくる。命をかけても守りたいものが僕にとっての守るもので、それ以外は全て捨ててもいいと思います。

僕の商品作りの持論は、<ヒット商品は打席数>ということ。100打数1安打でもいい。プロ野球でもしっかり下積みをした選手が本物だと思うし、そういう商品は売れます。最近は商品の向こうに会社の顔が見えてくる。良い企業は偶然では作れない。商品の向こうに虎屋の世界観が見えた上で商品作りを考えています。」

 

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お客様は神様?

三波春夫さんのセリフで有名な言葉だが、お客さまの中には絶対的優位な立場を利用して、企業の脅威となるケースもある。企業側はどう思っているのだろうか。そこには三者三様の考え方があった。

まずは、外郎氏がお客様の大切な役割について語った。

「我々にとって、出入りする全ての方がお客様。YESでもなければNOでもない。パートナーだと思っています。古来より、我々とお客様はお互いの信頼関係で成り立っています。お客様が認めたら商品を買って頂けるし、高すぎたら買わない、その価値観はお客様次第。お叱りのお言葉も、感謝のお言葉やお手紙も頂きます。それはとても有り難く、お金よりも大事。

現場の人間にはお客様の声が直接届きません。その声をなるべく店頭から製造へ伝えることで、社員は地道な作業を一生懸命こなす意義を理解し、良い商品ができる。それをお客様にお渡しし、またお答え頂く。その良い循環を保つために必要なのが、パートナーであるお客様だと思っています。」

続いて語ったのは田中氏。お客様に文句は言わせないという強い信念が伝わってくる。

「<お客様は神様>ではございません。神様は苦情や文句を言わないので。しかし、何も言わないけれど、何を考え、何を言いたいかを自分たちで察して気を抜かずに一生懸命やるという意味で<お客様は神様>だと捉えています。我々も先回りして考え、文句を言われないような商品作りをしなければいけない。ふりかけの素材も厳選し、その配合割合、加工方法、調味料、組み合わせなどいろいろ考えて作る。

うちの会社には、中学校から入って定年までずっと<旅行の友>だけを担当した者がいます。それくらい一品に執念と責任を持ってやっています。」

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最後に、高田氏が虎屋本舗らしく商人道の話を例に、お客様への気配りについて語った。

「私は<お客様は神様>だと思います。商人道に<富の主は天下の人々なり。売って悔やむは商人の極意と申すこと、よくよく納得せよ>とあります。顧客第一主義は江戸時代からあります。<おもてなし>という言葉は表が無い、つまり裏の意味で、表には見えないということ。寒い時にお茶が出てきたら、お茶碗が温まっているとか、気付かないところの気配りがおもてなしの原点。欧米人のサービスチップとは違い、日本人はそれを本能的にしてしまう。その美意識を徹底的に従業員教育することで、顧客第一主義を結果的に満たせる。精神性を高めることをやっています。」

 

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