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オフィス賃料上昇中! オフィスを「借りる」「買う」のメリット・デメリット

2016,10,04

Office
(写真=PIXTA)

 東京のオフィス市況は、活発な状況が続いている。

 総合不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールが2016年8月9日、7月の東京のグレードAのオフィス賃料、空室率の状況を発表した。(グレードAとは千代田、中央、港、新宿、渋谷にあるビルで、延床面積3万平方メートル以上、建物高さ20階以上、竣工年が1990年以降の新耐震基準を満たしている一定基準以上の建物をいう)

 賃料は2ヵ月振りに上昇し、前月比0.5%上昇、月額坪当たり3万5,951円だった。また空室率は1.8%と前月比横ばいの状況で、旺盛な賃貸需要が続いていることを示している。

 不動産市場は、金融マーケットと密接な関連がある。2016年7月29日に発表された日本銀行の金融政策決定会合では、ETF(上場投資信託)の買い入れを年6兆円に倍増するなど、一段の金融緩和策を進める内容だった。しかし、マーケット参加者が期待していたほどの内容ではなかったので、7月29日から8月2日にかけてのドル円の為替相場は1.1%の円高ドル安が進み、日経平均株価も同様に1.1%の下落、10年物長期国債金利は、0.118ポイントの上昇となった。これらの指標は、8月の不動産賃貸マーケットに、若干ネガティブな影響として表れてくる可能性がある。

オフィスを区分所有する

 このようなオフィスの不動産賃貸市況の中で、今注目を浴びているのがオフィスを区分所有する発想だ。自分が住む家に関しては、戸建て・マンションどちらにしろ、賃貸か購入かを選ぶ必要がある。しかしオフィスビルに関しては、従来は所有するという選択肢がほとんどなかったのが実情だ。オフィスを区分所有するという考え方は、賃貸ビル1棟ではなく、ワンフロア、または複数フロアを自社所有して入居することを目的としている。また、他社に賃貸することで家賃収入を得ることもできる。本業で得る売り上げの他に、家賃収入というもう一つの売り上げを得て、経営資源の分散を図ることにもなる。

オフィスを区分所有するメリット、デメリット

 では具体的に、オフィスを賃貸することと、所有することのメリット・デメリットの要素を挙げてみよう。

1. 区分所有のメリット
・ 不動産を所有するステータスを得られる
・ 空室にならない限り、毎月の賃料が売り上げとなり、収益の柱となり得る
・ 借入金で区分所有を購入しても、返済が終了した後、建物が資産として残る
・ インフレに強い資産=不動産を持つことになる
・ オフィスの机、会議室などのレイアウトの自由度が増す
・ 金融機関との間で、担保として使える。財務戦略の自由度が増す。減価償却を使え、キャッシュアウトしない経費を使うことができる
・ 不動産を所有することで企業としての信頼度がアップする
・ 不動産市況によるが売却時にキャピタルゲインがとれる可能性がある

2. 区分所有のデメリット
・ 建物を所有することにより、変化に対応する自由度が少なくなる
・ 初期投資の金額がある程度かかる
・ 所有する場所、建物などにより不動産としての価値が減ってしまう可能性がある
・ 建物の修繕費、管理費、固定資産税がかかる
・ 建物管理の付帯業務が増える

3. 賃貸のメリット
・ 建物に縛られないので、会社の成長の波に合わせ、選択できる幅が広い
・ 建物や付属設備に関する初期投資がかからない
・ ビルのオーナー、管理会社に頼れる
・ 入居者の立場で、賃料の支払いが済めば、ほかに手を煩わすことはない

4. 賃貸のデメリット
・ 毎月、賃料を払っても資産として残らない
・ 敷金、保証料、賃料、期間などオーナー側の各種条件をのむ必要がある
・ 将来インフレになったとき、賃料が上昇する恐れがある
・ 会社の成長により、オフィス移転の時、都度敷金、保証金などの賃貸費用、原状回復工事費などの追加の費用がかか

オフィスの区分所有という選択

 オフィスを1棟丸ごと所有することは、多額のコストがかかる、経営の変化に対応する自由度が減るなどとして、躊躇してしまう経営者の方も多いだろう。しかし一般住宅のようにオフィス所有にも各区分だけを所有、またはいくつかのフロアを所有するといった、区分所有の考え方が徐々に広がってきている。

 まず、法律面からみてみよう。日本においては、「建物の区分所有に関する法律」(以下、区分所有法)によって、1棟の建物を専有部分と共有部分に分け、専有部分に関しては所有者が独占的に使用する権利を有している。またエレベーター、廊下、エントランス、階段といった共有部分に関しても当然のことながら使用することができる。従って、建物の区分所有者であっても、1棟のオーナーと同様に所有権を持ち、建物を使うことができるのだ。

 次に、財務上のポイントとして、賃貸と購入では支払い総額は、どちらがかからないのだろうか。

 もちろん、最終的にはさまざまなケースがあるので、それによってどちらが優位かは異なる。従って、最終決断を下す時には専門家にみてもらう必要があるが、以下に一般的な考えを踏まえ、財務的な観点を見ていこう。

 まず賃貸物件は、毎月家賃を支払い、その金額は経費として記帳され、税務上も損金として落とすことができる。しかし、キャッシュアウトだけで終わってしまい、資産として残るものは全くない。

 次に、区分オフィスを購入した場合を考えてみよう。普通、区分所有オフィスを購入する際は、金融機関からの借り入れを起こすケースが大半なので、その前提で話を進めていく。

 借入金のうち、利息部分は税務上損金計上できるが、借入金の元本はキャッシュアウトだけで損金計上はできない。一見すると、税務上では賃料は全額損金計上できるので、そちらの方が有利に思えるかもしれない。ここで出てくるのが減価償却だ。減価償却とは、建物など高額なものを購入した場合、それが会社の財務に与える影響は購入したその年だけでなく、それ以降複数年にわたって及ぼすという考え方だ。

 一般的な新築建物の場合、鉄骨鉄筋コンクリート構造の事務所に供するものは、50年にわたって購入価格を損金に落としていくことができることになる。減価償却を使う財務上の最大のメリットは、キャッシュアウトなしに損金算入することができる点にある。また、中古で購入した場合、中古の耐用年数の計算方法があるので、もっと短い期間で償却を終わらせることができる。減価償却は企業の財務戦略上、上手に使えばとても有効なものだ。オフィスを自社で所有することは、この魔法の杖を手に入れることになるのだ。

 また、借入を起こして物件を購入する場合、特に敏感になるべきなのが借入金利だ。現在の金融マーケットで資金調達を行うことは、過去のトレンドと比較してもとても有利な条件で、変動金利のベンチマークとなる無担保コール翌日物金利はほとんど0%近辺で推移している。

 実際不動産を扱うプロたちは、金利状況によって物件を購入するか否かを判断する。オフィスを所有することで、このような経済環境を上手に捉え、財務戦略を考えることが可能となるのだ。

オフィスの今後を考える

 ここまで賃貸オフィスの区分所有という新しい観点からみてきたが、特に中小企業のオーナーの方にとって、本業を補完する不動産賃貸業を持つことは、事業のリスク分散にとって有効な手段だといえる。また、財務戦略上の一手段として、賃貸オフィスを区分所有することは一考に値するものといえよう。皆さんも一度オフィスの区分所有を考えてみてはいかがだろうか。

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