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ついにフィンランドで実験導入が決まった「ベーシックインカム」のメリット・デメリット

2016,12,08

finland

(写真=PIXTA)

2016年8月末、フィンランドにおいてベーシックインカム給付に向けての実験導入が決まったと報道された。日本とフィンランドの間には、社会文化や経済規模などに違いがある。この実験導入について、両国の相違点なども考慮したうえで解説しよう。

ベーシックインカム導入の目的と概要

フィンランドの失業率は、2015年で9.3%となっている。特に若年層の失業率は約17.4%と高く、フィンランド政府にとっていかに失業率を下げるか、そのための失業対策はどうあるべきかが重要な政策課題の一つである。

2016年8月末に決定したベーシックインカム給付の実験導入は、失業者の一層の貧困化や社会的な孤立化、排除化の回避に寄与できるどうかを検証するのが目的だ。同時に、官僚主義的な行政事務の簡素化とコスト削減につながるかを検証する目的もあり、以下のような形で行われる。

対象者 : 失業給付を受けている者
選出規模と基準 : 2,000~3,000人をランダムに選出
給付金額 : 社会保障制度で認められている最低限の金額560ユーロ
テスト期間 : 2017年と2018年の2年間

フィンランドの特徴

上記のフィンランドによる試みのメリットとデメリットを理解するために、クロスカルチャーの観点から、フィンランドの一般的な特徴を日本と比較しながら説明しよう。

フィンランド
日本
組織上の権威主義より、平等を好む
組織上の権威を大事にする傾向がある
集団的な行動よりも個人主義的な行動が多い
集団的な行動の方が好まれやすい
賃金、職位、政治の場での男女格差がほとんどない
賃金や職位において男女の格差がある
出産の際は妻と夫に長期出産休暇が認められる
出産は女性にとって退職につながることがある
具体的かつ短期的な成功を重要視している
長期的な視野が好まれる
前例や横並びを意識する割合が少ない
前例や横並びを意識し、急激な変革を好まない

これらの社会文化的特徴は、日本とはほぼ正反対にあるといえるかもしれない。

また、フィンランドの人口は約550万人で、日本だと北海道と同程度であり、国としての経済的な規模は小さい。

ただし、国民レベルでみると、2013年の1人当たりのGDPは約4万9,000ドル(日本:約3万9,000ドル)、2015年の平均給与は4万5,400ドル(日本:3万3,500ドル)だ。フィンランド国民の方が日本国民よりも豊かだといえる。

メリットとデメリットおよび留意点

本件は、ベーシックインカムの給付が社会保障政策上、特に失業者対策として有効な政策となり得るかを検証するために試験的に行われるが、対象者数、いわゆるサンプル数が少なく、その立証に役立つかどうか疑問視されている。

他方、最低限の金額を給付することにより、ニート問題や非正規雇用問題の解消に寄与すると期待されているが、労働意欲の低下につながるとの危険性も指摘されている。ただし、官僚主義的な行政事務の簡素化とコスト削減を目的にしている点については、行政のスリム化として一考に値する。

財源の確保も課題だ。制度の悪用は一切許されるべきではなく、それを事前に回避することこそ行政の目的である。行政事務の拡大は必要であるという考え方もあり得るが、費用対効果の観点から有意義な試みだ。

フィンランドは日本と比較して社会文化や経済的規模、あるいは失業率の面で大きな相違が存在する。国民の豊かさや男女格差という点にも違いがあるといえるだろう。

今回の試みは、国民の豊かさをどう引き上げていくか、失業対策はどうあるべきか、あるいは国政や地方行政のあり方は費用対効果の観点からどうあるべきかを再考する絶好の機会である。その推移を見守っていきたい。

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