経営者なら見習いたい、日産自動車社長カルロス・ゴーンの6つの経営手腕

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(写真=PIXTA)

カルロス・ゴーン氏はなぜ、日産復活を成功させることができたのか。

「コストキラー」「ミスター調整(FIX IT)」など世間では厳しい面が強調されることも多いが、それだけでは瀕死の企業組織を立て直すことはできなかったはずだ。日産が復活を遂げたゴーン氏の経営手腕から、いま行き先不安を抱える多くの経営者にとっての処方箋を探る。

その経営手法が日産を救った

今でこそ世界的な自動車メーカーの一社となっている日産自動車だが、1999年頃、同社はまさに瀕死の状態だった。かつての人気車種の売上も陰り、社員の士気もこれ以上底はないというほど落ち込み、2兆円という巨額の有利子負債を抱え、上場企業としては史上ワースト記録となる6,844億円というとてつもない額の赤字を計上していた。

この窮状を救うべく、提携していたルノーからCEOとして送り込まれたのが、カルロス・ゴーン氏だった。そしてゴーン氏は日産の業績回復、経営や組織立て直しのために辣腕を振るう。結果、日産は見事V字回復を遂げたのだ。その際、ゴーン氏が日産復活のための強力な処方箋として打ち出したのが、「日産リバイバルプラン」などの斬新な経営計画だった。

日産復活を成功に導いた6つのポイント

ゴーン氏が日産復活に導いたポイントは、次の6つに絞ることができるだろう。

1. 明確な目標設定

ゴーン氏は日産に入社早々、各セクションから若手のエース級社員200人を集め、部署を横断して日産の問題点を洗い出した。そして、わずか3ヵ月で作り上げたのが『日産リバイバルプラン』だ。その内容は、以下の3点だ。

・ 2000年度に、連結当期利益の黒字化を達成
・ 2002年度に、連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
・ 2002年度末までに、自動車事業の連結実質有利子負債を7,000億円以下に削減

そしてこの大胆な 3つのコミットメントを、強力なトップダウンのもと、すべて1年前倒しで達成したのである。

2. 徹底した現場主義

一方でゴーン氏はCEOに就任以来、生産や開発の現場などを徹底的に回り、つねに現場第一主義を貫いた。経営建て直しの際には、えてして机上での数字合わせに陥りがちだが、ゴーン氏は常に現場にこだわり、現場の事情、現場からの発案を土台にして変革に取り組んだ。

3. 社員の意見を聞く

現場主義を貫くからには、現場の意見こそが重要である。不採算部門の廃止など、時には冷徹なコストカッターという印象も持たれがちなゴーン氏だが、現場での社員の声こそが常に重要であることを強く意識していた。それは「改革を実行したのは私ではなく、従業員たちです。私はテコであり、触媒にすぎません」という彼の言葉からも窺い知れる。

4. 客観的な事実把握と冷静な判断

マクロ的な経済・経営情報と現場からの声を客観的な事実として一つひとつ積み上げ、それらの結果を十二分に踏まえて冷静な判断を下す。それこそがゴーン流といえるだろう。日本人の経営者は、一般的にこれまでの慣例やしがらみ、情実などに流され、誤った判断に陥ることが少なくない。ゴーン氏のように常に物事を客観視し、冷静に状況を分析できるような姿勢こそ、経営者には必須といえるだろう。

5. 目標を数値化する

『日産リバイバルプラン』が軌道に乗り始めた2002年、ゴーン氏は「日産180」という3ヵ年経営計画を実施した。180とは次のような具体的な数値目標だった。

1:3年間で販売台数を100万台増やす 
8:8%の連結売上高営業利益率を達成する
0:負債を0(ゼロ)にする

結果として日産は2002年度に連結売上高営業利益率10.8%を達成し、自動車事業実質有利子負債0も実現した。「日産180」計画も、見事にその目標を達成したのである。

目標を具体的に数値で設定することにより、これから取り組むべきことが明確になり、種々の問題の洗い出し、解決策の提案・実行にも結びついていった成果といえるだろう。

6. 自社製品への愛

どれほど優れた経営手腕を有していても、自社製品に対して愛着のない経営者は社員のみならず株主や顧客からも信頼されないだろう。ゴーン氏はもともと車好きとしても有名で、多くの車を所有していることで知られている。もちろん現在の愛車はGT-R、エルグランドなどの日産車である。

そのリーダーシップから見えてくるこれからの経営の処方箋

ゴーン氏の経営改革により、日産は2003年度には約12%まで落ちた国内シェアを20%近くまで回復させた。

フォーチュン誌は2003年、ゴーン氏を「アメリカ国外にいる10人の最強の事業家の一人」と称した。また2005年5月からルノーのCEOも兼任したゴーン氏は、フォーチュン・グローバル500中の2社を同時に率いる世界で初めてのリーダーとなった。

世界的な不況の影響もあり、多くの自動車メーカーが厳しい環境にある中、カルロス・ゴーン氏の経営手腕が再び注目を集めている。

その独創性、分析力、実行力など、ゴーン氏の経営手腕をつぶさに観ると、どの業界・企業にも共通する、底辺から復活するための多くのヒントが隠されているといえるだろう。

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