おさえておきたいインフレ・リスクヘッジになる金・銀・プラチナのメリットとデメリット

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(写真=corlaffra/Shutterstock.com)

金・銀・プラチナは安全な実物資産といわれている。それは、金・銀・プラチナはインフレに強く、貨幣のように価値が下がる恐れが少ないためである。現在の世界経済は、政策、主要国の投票イベント、テロ、そして金融市場の変動など、さまざまな要因に大きな影響を受け、非常に不安定になっているといえる。

このような現代において、金・銀・プラチナがインフレ・リスクヘッジのための投資先とされているのだ。ここでは、金・銀・プラチナ投資のメリットとデメリットを解説していこう。

金・銀・プラチナ投資はインフレ(物価上昇)対策になる

「物価が上昇しても、貴金属そのものの資産価値は下がらない」といわれている。これは、いったいどういうことなのだろうか。

貨幣とは、モノやサービスの価値を表している尺度である。例えば、シャツ1枚が3,000円の値段で販売されている場合、私たちは3,000円の貨幣でそのモノの対価を支払い購入している。ではなぜ、インフレ時には貨幣価値が下がることになるのだろうか。

通常、世の中の経済が順調で景気がいいといわれている時期は、需要が供給を超えている状態にあり、モノを欲しがる人が増えているのに、モノ自体が不足している。そうすると、今買いたいのに買えない人が今よりも高い値段で買いたいと言ってモノを手に入れようとする。このようにして、“市場原理”が働き、モノの値段が上がっていくのだ。上述の例でいうと、シャツの値段が3,000円→3,300円→3,500円と上がっていくことによって、以前と同じモノを同じ数量、同じ金額で買うことができなくなる。同じモノに対する価値が上がっているため購入時に貨幣が余計に必要になるということは、相対的にみて貨幣価値が下がってしまったことになるわけだ。これがインフレによる貨幣価値下落の仕組みである。

したがって、貨幣を保有していても物価が上昇し続ける限り、貨幣の価値は上がらず逆に下がってゆく。また、貨幣はインフレだけではなく貨幣を発行している国や政府の信用度によってもその価値が左右されるということも覚えておこう。

一方、金・銀・プラチナなどの貴金属は実物資産である。実物資産のメリットは、それ自体に価値があるという点だ。実物資産のため、倒産や国家のデフォルトなどの最悪の状況下においては株式や貨幣のように価値が全くなくなってしまう可能性は極めて少ないといえる。これが、貴金属そのものの資産価値は下がらない、つまり金・銀・プラチナに投資することがインフレ・リスクヘッジ対策になるといわれている理由である。

金・銀・プラチナ価格変動

参考までに、2007年から2009年までに起こったサブプライムローンが発端となったリーマンショック、そして世界金融危機以降の金・銀・プラチナの価格をみてみよう。(※価格は田中貴金属公表の税抜参考小売価格)

● 金価格(円/グラム):
2016年(11月まで)平均価格4,398円。2007年平均価格2,659円。約9年間で平均価格が約+65%上昇。

● 銀価格(円/グラム):
2016年(11月まで)平均価格61.89円。2007年平均価格53.83円。約9年間で平均価格が約+34%上昇。

● プラチナ価格(円/グラム):
2016年(11月まで)平均価格3,533円。2007年平均価格5001円。約9年間で平均価格が約-30%目減。

金・銀・プラチナ投資は為替変動の影響を受けやすい

世界的に、金・銀・プラチナの取引価格は、海外ドル建価格(ドル/トロイオンス※銀はセント/トロイオンス)が基準であり、日本市場の取引価格に為替の影響を受ける。つまり、日本人が金・銀・プラチナ投資を考える場合には、為替変動も視野にいれておかなければならないといえる。

参考までに、為替平均(対米ドル)を見てみよう。

2007年平均:118.86円
2009年平均:94.65円
2011年平均:80.79円
2013年平均:98.70円
2015年平均:122.11円

年次平均をみても分かるように為替は変動している。2016年においては、1月平均119.12円、8月平均102.34円、11月平均109.27円と、月次でみても変動が大きいといえる。

では、実際どのように為替変動の影響を受けてきたのだろうか。前述の明治以降の金取引史上最高価格が日本では1980年にあった例を参考としてみよう。

1980年:為替1ドル=227.83円換算
金の海外ドル建平均価格612.13ドル(トロイオンス)
日本小売価格4,499円(グラム)
海外取引最高価格850ドル(トロイオンス)
日本取引最高価格6,495円(グラム)※日本史上最高価格

2011年:為替1ドル=80.79円換算
金の海外ドル建平均価格1,572.34ドル(トロイオンス)
日本小売価格4,060円(グラム)
海外取引最高価格1,896.50ドル(トロイオンス)※海外史上最高価格
日本取引最高価格4,745円(グラム)

2015年:為替1ドル=122.11円換算
金の海外ドル建平均価格1,159.94ドル(トロイオンス)
日本小売価格4,564円(グラム)

このように、日本取引市場では1980年に史上最高価格をつけているが、海外取引市場では2011年に史上最高価格をつけている。必ずしも海外市場で高く取引されているから日本取引価格も高いというわけではなく、為替変動の影響を大きく受けていることが理解できる。為替変動を逆手にとると、円高ドル安時のほうが海外のモノを安く購入できるため割安なケースもあるので、為替変動へも注目しながら金・銀・プラチナの取引価格を追うべきだといえよう。

目安にしたい投資価格と期間とは

● 投資価格
2015年時点における金採掘にかかる平均費用は約1,200ドル(1トロイオンス当たり)と推測されている。1トロイオンスは約31.1035グラムなので、1ドル=約114円(2016年12月7日時点)で計算すると、日本円での1グラム当たりの採掘費用は約4,398円(1,200÷31.1035×114)となる。したがって、上述の為替1ドル=約114円を前提とするならば、これ以下の価格であれば金に投資をしてもいい価格といえるかもしれない。しかし、2016年12月7日時点での日本小売価格は4,673円となっており、上述の4,398円を約6%上回っているのでまだ買い時とはいえないであろう。

● 投資期間
過去20年間、金投資を継続(日本取引価格に限定)していた場合を考えてみよう。1996年時点での金取引平均価格は1,405円、2016年時点では4,398円である。つまり、20年間で3倍以上に価値が膨れあがり、年間約5.8%の累積利益(複利換算)を生んでいることになる。

ただし、これは過去のデータによる算出であり、また定期預金や株式投資の配当金とは全く異なるため、毎年決まった安定的な収入ではなく値上がりの含み益であることを覚えておきたい。

このように、金・銀・プラチナ投資も他の投資同様、長期継続的に投資するのが得策といえる。銀行へ預けておいても預金金利がつかず、株式は倒産や業績不振で、貨幣はインフレなどでそれらの価値が目減りする可能性がある。実質上の資産価値が減りにくい実物資産への投資は、今後の資産運用の1つとしておさえておきたい。

為替変動、海外取引市場における価格変動に注目しながら、ここで学んだ金・銀・プラチナ投資のメリットとデメリットを踏まえ、投資をはじめるきっかけとしたい。

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