ストックオプション保有者は特に要注意! 7月開始の出国時課税とは

3D Looking for money with magnifying glass concept
(写真=PIXTA)

 7月1日に出国税が新たに導入された。出国税の対象者は、基本的に保有している有価証券の時価評価の総額が1億円以上の人であり、理由がいかなるものであれ、住所または居所が海外に移る時点で含み益に課税されるというものだ。

 「1億円もの資産は持っていないから、自分には関係ない」とお思いの方。もし、あなたがストックオプションを付与されているのならば、対策を練っておく必要があるかもしれない。

出国税の課税対象とは

 出国税の課税対象となる資産の定義は、「所得税法上の有価証券もしくは匿名組合契約の出資の持分及び未決済のデリバティブ取引、信用取引もしくは発行日取引」だ。この“所得税法上の有価証券”には、ストックオプションも含まれている。

 ストックオプションとは新株予約権のひとつであり、会社の役員や従業員が、その地位に基づいて、一定期間内にあらかじめ決められた価格で優先的に自社株を購入できる権利だ。付与された時点では経済的な価値はないとされており、実際に行使して自社株を購入するとき、さらにその株を高値で売却する時点で、初めて課税が問題となる。

 なお、ストックオプションを税の視点でみると、「税制適格ストックオプション」と「非税制適格ストックオプション」に分かれる。

税制適格ストックオプション

 付与対象者や権利行使期間などに税法上の一定の制限があるもの。権利行使時には課税がされず、権利行使によって取得した株式を売却した時に初めて「譲渡所得」として課税される。税金上有利。

非税制適格ストックオプション

 上記以外のもの。権利行使時に権利行使時の時価と権利行使価格の差額が「給与所得」として課税され、売却時に売却価格と権利行使時の時価が「譲渡所得」として課税される。税制適格に比べて税金上不利。

課税対象の基準は?

 さて、出国税の課税対象となるかどうかの判断については、納税管理人の届出がなされているかで変わってくる。海外に居住しているとしても、日本にある不動産の賃貸収入がある場合や不動産・株式等の譲渡収入がある場合等には、日本で確定申告が必要となるが、その本人の代わりに税務署からの通知を受け取ったり、確定申告を行ったりする者を納税管理人という。

納税管理人の届出をしてから出国する場合:
出国日におけるストックオプションを権利行使した場合の時価+その他保有している有価証券 >1億円

納税管理人を定めずに出国する場合:
出国日の3カ月前の日におけるストックオプションを権利行使した場合の時価+その他保有している有価証券 >1億円

 会社が東証などに上場していて市場価格がわかりやすい場合は計算しやすいだろう。しかし、ベンチャー企業のようにこれからIPOを目指している場合は評価が難しい。法人の価値評価をしなくては、出国税の課税対象かどうかの判断もできない。勤務先からストックオプションを付与されている場合、その会社がベンチャー企業であり、急成長を遂げているならば、出国税の課税対象となる可能性はゼロではない。

 この場合は、早々に会社に相談し、会社そのものの評価額について会計士などの外部の専門家に依頼してもらうよう上層部に伝えることが必要となる。

納税の猶予制度

 さて、出国税の課税対象となった場合、納税の基礎となる価格は次のように計算する。

ストックオプションを権利行使した場合の時価―(ストックオプションの付与時の価格+必要経費)=納税の基礎となる価格
※他に株式などを持っている場合は、それぞれに計算する。ここでは省略。

 これに所得税15%(出国する時期によっては所得税15%+住民税5%=20%)を乗じた金額で、仮に納税の基礎となる金額が5,000万円だとするならば、その15%の750万円を納付しなくてはならない。有価証券などの保有資産が高額であっても、現預金が常に潤沢なケースばかりではない。即金で納税資金を用意できない場合もあるだろう。

 この場合は、納税の猶予という救済策がある。納税額に見合った担保を提供すれば、原則5年、最長10年は出国税の納税の猶予をしてもらえるというものだ。ただし、この場合は納税管理人の届出と、毎年確定申告時期に納税の猶予の継続の届出が必要となる。

 ちなみに、仮にいったん出国税を納税しても、5年以内に帰国すれば、取消の手続きを行うことで還付してもらうことができる。ただし、帰国後4カ月以内という期限付きなので注意が必要だ。

困ったら会社と専門家に相談を

 ストックオプション制度を設けている会社は、通常、取締役や社員に対してモチベーションを維持・向上してもらうべく取り入れていることが多い。社員も当然、やりがいを求めて入社することだろう。しかしながら、業務拡大の一環として海外に赴任することになった途端、出国税がネックになってやる気が削がれては元も子もない。社員個人だけでなく、会社にとっても大きな損失となる可能性が高い。

 出国税は、課税対象の判定も課税額の計算も一個人では難しい。もし、少しでも心当たりがあるのなら、なるべく早く会計士や税理士などの専門家に相談するのがよいだろう。また、上場していない会社ならば、会社に相談することも必要となる。この場合、個人としての納税の問題だけではなく、個人の問題がひいては会社の成長にとって大きな妨げになりかねないことを含めて持ちかけるとよいだろう。

百年の計

イベントスケジュール