長寿企業に見る、後継者育成と「番頭」の重要性

Japan

(写真=PIXTA)

日本には、創業以来200年以上続く長寿企業が3,000社以上存在し、世界でも群を抜いていることはよく知られている。

昨今、事業承継に悩む企業が増えているなか、こうした長寿企業が存続してきた秘密として、後継者選びと「番頭」と呼ばれるナンバー2の重要性が見直されつつある。

業務遂行能力で後継者を選んだ日本の老舗

日本の老舗企業の歴史は、創業家という日本の「家」制度が密接に関わってきた。ただ、中国や韓国など海外のオーナー企業のやり方と異なる点は、後継者を選ぶ際に、血縁よりも「誰が商いにふさわしいか」という観点が重視されてきたという点だろう。

基本的に家業を継ぐのは長男だが、長男になんらかの不適格理由があった場合、次男・三男が後継者となることも珍しくなかった。また実子に適格者がいない場合は、親戚筋から養子を迎えたり、時には優秀な従業員を養子や娘婿としたりして、後継者に据えることもあった。血縁者だけでなくビジネスの適性で判断するというのが、日本の老舗でのやり方である。

日本型の老舗経営におけるユニークな存在「番頭」

商いの経験が未熟な後継者に対し、円滑に事業承継を進めるために忘れてはならないのが、「番頭」の存在だ。番頭という言葉が使われる機会もめったになくなり、番頭というと「銭湯の番台に座っている人」というイメージがあるかもしれない。

番頭というのは、日本型組織での社長を支える補佐役・女房役を言う。経営者一人では対応できる範囲に限界があるため、組織や事業の調整役として番頭が必要になる。この番頭の存在は、日本型の老舗経営におけるユニークなものだ。

日本の優れた企業には、優れた番頭がいた。例えば、ホンダの創業者、本田宗一郎氏のビジネスパートナーとして支えた藤沢武夫氏だ。技術開発は本田宗一郎が担当し、経営は藤沢武夫が受け持つことで、ホンダを世界的企業に飛躍させたことはよく知られている。

番頭は「第二の経営者」

日本古来の番頭は、ときに経営者をいさめたり、汚れ役として泥をかぶったりすることすらあった。また、経営を熟知した番頭は、後継者の教育係として老舗のかじ取りを指南した。

補佐役というと、近代的な会社組織でも専務や常務、取締役、最近では最高経営責任者(CEO)など、経営を支える役職や役割を務める人物が存在するではないかと考えるかもしれない。しかし、これらの役職は、経営者と主従の関係が強い。また、相談役や顧問という立場は引退後の名誉職であるし、監査役や社外取締役も、どれほど経営者に影響を及ぼせるだろうか。第一、経営者が選んで連れてきた人材では、経営にもの申すことは難しい。

番頭は、企画やマーケティングを取り仕切るのでもなく、営業など現場のリーダーでも管理職でもない。経営者の影となって働く、まさに「第二の経営者」とも言うべき存在なのだ。

CSRやコンプライアンス遵守にも番頭の存在が重要

昨今、企業のCSR(企業の社会的責任)や、コンプライアンス重視に対する世間の目は厳しさを増している。オーナー企業というと、オーナーや創業家一族の独断が許されるというイメージがあり、なおさらだろう。

さまざまな企業の不祥事を見てもわかるように、現代ではカリスマやワンマン経営がもてはやされる時代ではない。とはいえ、責任と役割分担が曖昧な組織は、決断力に欠け、無責任な経営プランがはびこってしまう。

21世紀に生き残る企業・組織を考える際に、経営者を支え、時にいさめることができる番頭の存在は、ますます重要性を増している。

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