離職率低下の切り札になるか、「在宅勤務制度」を知ろう

woman

(写真=kudla/Shutterstock.com)

昨今、政府や民間で「働き方改革」が叫ばれている。長時間労働による過労死、自殺、メンタルヘルス不調など、働き手の心身問題に加え、介護や子育てを理由にした働き盛りの世代の離職なども喫緊の課題だ。

このような問題を解決する切り札として昨今注目を集めているのが、在宅勤務をはじめとするリモートワークの拡充である。今回は、在宅勤務制度の導入で先行する企業の実例やリモートワークの課題を見ていこう。

テレワーカーはすでに700万人を突破、トヨタも導入

国土交通省の「平成26年度 テレワーク人口実態調査」によると、在宅型テレワーカーの人数は2011年から増加傾向で、2014年は550万人となっている。「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー」の数も220万人に達した。

インターネットや携帯デバイスの発達で、「いつでもどこでも仕事ができる」環境が整った結果、リモートワークは普及しはじめている。また、2011年からテレワーカーが増加した背景には、東日本大震災とその後の計画停電をはじめとする社会混乱の中で、不測の事態の中でも事業を継続するための企業のBCP(事業持続計画)策定が意識されたこととも関係があるだろう。

トヨタ自動車も2016年、ほぼすべての総合職社員を対象とした在宅勤務制度を導入すると発表し、注目を集めた。日本を代表する企業の一つであるトヨタが導入するとなれば、取引先や下請けを含め、さまざまな企業に波及効果が及ぶことも考えられる。

中小企業でなぜテレワークが広がらないのか

総務省「通信利用動向調査」によると、テレワークの導入比率は、従業員1,000人以上の大企業に比べ、従業員1,000人未満の企業の方が低い。導入していない理由は、70%以上の企業が「テレワークに適した仕事がないから」と回答している。

テレワークを実現するには、それを可能にする環境を整える必要がある。リモートワークをするためのネットワーク構築やソフトウェアの導入などの物理的な環境に加え、成果を図る基準となる人事制度や給与体系、社内規定などのソフト面の整備も重要だ。もちろん、それぞれの意識改革も必要になる。

また、中小企業では大企業に比べて少ない人数で業務を行っているため、1人が担当する業務が多岐にわたっていることも多い。業務が属人化していることで、リモートワークがしにくくなっているという可能性もある。

働き方の硬直化は経営リスクに

このように「できない」理由を並べればきりがないが、働き方に対する社会の意識が変わりつつある昨今、「当社の制度・業務システムでは導入できない」と思考停止してしまうと、長い目で見て経営リスクにつながりかねない。

まずは、人材採用やリテンション(引き留め)の問題がある。昨今、団塊世代の大量退職と少子化で、企業の人手不足が顕在化しつつある。日本生産性本部による2017年度新入社員を対象とした意識調査では、74.0%が「残業が少なく、自分の時間を持てる職場がよい」と回答している。リモートワークに限らず、働き方の多様性や柔軟性を認めない企業は、売り手市場の中で優秀な人材から敬遠され、採用が難しくなる可能性がある。

これは既存の社員に対しても同様で、優秀な社員が介護や子育てなどの理由で業務を続けられないとき、働き方が硬直化したままだと、退職していくのを見ているしかないのだ。

長期的視野に立った変革を

在宅勤務を認めると、社員がどのように仕事を行っているかわからず、不安だと思う人もいるかもしれない。だが、テレワークの導入をはじめとする働き方の多様化を進めた結果、社員のモチベーションが高まり、離職率が低下したという事例もある。

自社の将来的な存続もかけた長期的視野に立って、働き方の柔軟性を認めていく必要があるのではないだろうか。

百年の計

イベントスケジュール