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売りを制するものは相場を制する〜上げ100日、下げ3日のメカニズム


Red trend as symbol of economy drop or financial crisis
(写真=PIXTA)

 8月下旬に中国株の暴落が世界中に波及し、2万円を超えるまで上昇していた日経平均株価は、1万7千円台まで急落した。これは、中国景気の減速が、日本を含む、世界経済の停滞へと繋がるのではという思惑から、売りが売りを呼ぶ展開となったものであり、相場の格言「上げ100日下げ3日」の言葉通りになったといえるだろう。では、なぜ、下げ相場のスピードは速いのだろうか。

「価格優先の原則」によって発生する価格の上昇スピードと下落スピードの違い

 売買注文を成立させるときの優先順位の一つに価格優先の原則というものがある。具体的には、同じ銘柄に対する売り注文が複数ある場合、もっとも低い値段を指定した売り注文が優先的に成立する。

 同様に、買い注文が複数ある場合、もっとも高い値段を指定した買い注文が優先的に成立する。このような価格優先の原則が成立している場合には、売り注文が連続的に成立すると、価格は下がっていき、買い注文が連続的に成立すると価格は上がっていく。

 ここで買い注文が連続的に成立して価格が上昇していくと、今度は逆に利益確定のための売り注文が徐々に増えてきて上昇スピードが抑えられていく。

 反対に、売り注文が連続的に成立して価格が下落していくと、通常は値頃感から買い注文が入っていって徐々に下落スピードが抑えられていく。しかし、この下落スピードが大きい場合には、値頃感からの買い注文よりも、価格が下落したことによって、損失を抱えて決済せざるを得ない投資家の損切りの売り注文が増えてきて、更に下落スピードを加速させるといった状況に陥る。これが、「売りが売りを呼ぶ」という状況だ。

中央銀行に売り向かい勝利した、ジョージ・ソロス

 この「売りが売りを呼ぶ」状況で、リターンを上げているプロの投資家も多くいる。ある銘柄を高値で売っておき、安くなったところで買い戻すと、その価格差が利益となるためだ。もっとも有名な例は、ジョージ・ソロスによる英国ポンド売りだ。現在ユーロが流通しており、欧州の多くの通貨はユーロを利用しているが、英国は参加していない。

 その理由は、1990年に欧州為替相場メカニズム(ヨーロッパにおける為替相場の変動を抑制し、通貨を安定させることを目的とした制度で、当時は、定められた変動幅内で為替が動いていた)に参加したものの、1992年には、英国を含む多くのヨーロッパ諸国で景気が低迷し、利下げを余儀なくされる状態となった。

 しかしながら、ドイツがこれに反対したことで割高状態となったポンドを売りで仕掛けたのがジョージ・ソロスである。100億ドル相当の資金で売りを浴びせられたイングランド銀行(中央銀行)はポンド買いの介入を行ったものの、ポンド売りの流れは止まらず、結果として、ジョージ・ソロスは10億ドルほどの利益を生み出し、英国は欧州為替相場メカニズムを脱退するに至ったのだ。

 そのため、英国はユーロ圏であるにも関わらず、ユーロではなく自国通貨であるポンドを使っているのである。この、イングランド銀行とジョージ・ソロスとの戦いの中で、イングランド銀行が勝つと考えて買い向かっていた投資家の多くが損失に耐えることができなくなり、損切注文を行ったことは容易に想像できるだろう。

相場の売り手を意識した売買がリターンの向上につながる

 このように、下げの速さとデリバティブ取引を駆使して、プロの投資家は利益を上げているのだ。今回の下げ相場で自分の資産が縮小していくのをなす術なく呆然と見ている投資家も多かったと思われるが、少し視野を広げるのが大切だろう。

 例えば、すでに買いのポジションを持っているのであれば、ヘッジを目的とした売りポジションを持つのも悪くはない。信用取引や先物やオプション取引など、デリバティブのハードルが高いのであれば、インバース型のETFを買うのもよいだろう。

 何より、実際に売りのポジションを持たないまでも、相場の売り手を意識して「自分が売り手だったら、いつ売るだろうか?」と売り手の気持ちを考えることで、相場を多面的に見ることができるようになり、上昇相場をただ眺めるのではなく、一定のタイミングでポジションを減らす、もしくは、利益確定させる時期を考え、パフォーマンスを向上させることにつながるはずだ。

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