円滑なバトンタッチを目指す、事業承継5つのステップ

(写真=Naypong/Shutterstock.com)

経済産業省の試算では、事業承継問題を放置すると、団塊世代の経営者が引退する2025年ごろまでの今後約10年間に、累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性が指摘されている。事業承継には年単位での時間がかかるケースもあり、思い立ったときはすでに手遅れにもなりかねない。中小企業庁の「事業承継マニュアル」をもとに、円滑なバトンタッチに向けた事業承継の5ステップについて見ていこう。

ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識 

日本政策金融公庫総合研究所経営者の調査では、自らの代で廃業を予定している企業の引退予定年齢は平均 71.1歳となっている。高齢化社会の中で、経営者が70~80代になっても事業承継問題が片付いていない企業も多い。事業承継をスムーズに終わらせるために10年近い年月がかかることも考えると、経営者が60代に達する前には承継問題に着手したいところだ。

これまで、実子が跡を継ぐケースが多かったため、中小企業の後継問題は親族内の問題だと捉えられやすい。そのため、承継問題を抱えていても、外部に相談する経営者はごく少数だった。しかし、2015年12月にみずほ総合研究所株式会社が行った調査では、直近10年の従業員や社外の第三者といった親族外承継は65.7%に達している。外部への承継を考えるのであれば、さらに計画的に事業承継計画を進めるべきだろう。

ステップ2:経営状況・経営課題等の把握(見える化)

自らの代で廃業を予定している企業の多くは、市場環境や自社の先行きの暗さから、実子やその他に事業を継がせるのはしのびないと考えているようだ。一方、廃業を予定している企業の中には、ニッチな技術を保有しているため経営が好調な企業もある。それを踏まえると、自社の経営状況や課題だけでなく、世の中のニーズや業界動向まで含めて先行きを見通すべきだといえるだろう。

そのためには、身近な専門家や金融機関等に協力を求めた方がよりスムーズだと考えられる。また、関係者に対して自社の状態を開示するためにも、正確で適正な決算書の作成や、知的資産等の適切な評価といった「見える化」にも取り組むべきだ。親族内承継の場合は、自社株の買取りや相続税が発生した場合に備えて、どれくらいの資金が必要かも試算しておこう。

ステップ3:事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

事業承継は、経営者交代をきっかけとしてより一層事業を発展させるチャンスだ。若い世代により良い状態で引き継ぐためにも、経営状態の改善に努めることは、現経営者の責務でもある。「磨き上げるべき対象」は、業績やコスト削減にとどまらない。「商品やブランドイメージ」「顧客や金融機関、株主との良好な関係」「優秀な人材確保」「知的財産権や営業上のノウハウ構築」など、多岐にわたる。自らが築き上げた「企業」という資産の総まとめだと考えて取り組もう。

ステップ4:事業承継に向けた計画・行動開始

今後の段階については、親族内・従業員承継の場合と、事業譲渡や会社買収など、いわゆるM&Aによる第三者承継の場合で、やるべきステップが変わってくる。

・ステップ4-1:事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)
親族内・従業員承継の場合は、会社の今後10年を見据えた事業承継計画の策定が重要だ。現在の事業領域にとどまるのか、新事業にチャレンジするのかなど、10年間の中期計画を立てよう。事業承継後、計画にコミットするのは後継者であるため、後継者とともに策定するのが望ましい。事業承継計画は、資産の承継・経営権の承継だけでなく、自社の経営理念を承継することについても忘れてはならない。

日本の数多くの老舗企業は、時代が変わっても経営理念を受け継ぐことで、のれんを守ってきたからだ。経営に対する想い、価値観、信条を後継者や後に残る従業員と共有することで、承継後もブレることのない強みを維持することができる。

・ステップ4-2:M&Aなどのマッチング実施(第三者承継の場合)
第三者承継を選んだ場合は、ステップ3の後で具体的なマッチング実施に移る。M&Aには専門的なプロセスが数多くあるため、専門家の手を借りたい。M&A専門業者や金融機関、士業等の専門家が候補に上がるが、中小企業の後継問題でのM&Aだと多くは小規模なディールになるため、対象外となることもある。中小企業庁が設置している事業引継ぎ支援センターなど、公的機関の活用が望ましいだろう。

ステップ5:事業承継の実行

親族内・従業員承継、第三者承継とともに、いよいよ事業承継の実行に移る。後継者にバトンタッチすることで、企業が新たな成長ステージに入ることを祈念しよう。

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