新たな組織基盤を作るための社員寮の活用とは

(写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

会社経営において最も重要な位置を占める人材戦略。近年、少子化による労働力の減少を背景に各社の採用難が進行している。そこで新たに活用を期待されているのが、社員寮だ。
なぜ、今の時代に社員寮なのか。今回は、その背景と期待される効果について考察していく。

拡大していく企業の採用難事情

人口の減少や働き方改革による学生側の志向変化に伴い、採用難を訴える企業が増加し続けている。財務省が行った、大企業、中堅企業、中小企業の計1,341社からの聞き取り調査によると、人手不足と感じている企業の割合は全体の71%にも及んでいる。

人手不足になれば、その分一人当たりの労働量も増えてしまう。結果的に、それらが残業や休日出勤などを生み、人が離れていく。そして、離れた人を採用しようにも、そもそも労働力として採用できる人の数が少なければ、離職率が高いというレッテルから応募者も来なくなる。そんな負のループが巻き起こってしまっていると言えるだろう。

地方採用の強化が喫緊の課題

その土地に人がいないのだから、いくら採用のための予算を投下し、露出を増やしたところで、期待できる効果は少ない。

そこで近年、企業が新たな取り組みとして力を入れているのが、地方大学生の採用だ。

IT業界大手の企業では、地方学生採用強化プロジェクトを発足し、地方大学への出張セミナーを積極的に行っている。また、マザーズ上場のベンチャー企業では、地方学生向けの独自施策である「1日完結選考」を行っている。これは、会社説明会から最終選考、内定通知までを1日で行う採用手法で、地方学生の就職活動における時間とお金の課題解決につながっている。

地方採用者の受け口としての社員寮

そうした地方採用への強化を背景に、復活の兆しを見せているのが社員寮だ。高度経済成長期に福利厚生の一環として用意された社員寮も、景気低迷に伴い整理され、現在における稼働率は減少の一途を辿るものだった。

しかし、景気回復に伴い、再度、福利厚生の充実に乗り出す企業が増加。地方学生の受け口として、社員寮を一つの武器にしようとする企業が増えてきているのである。

地方学生が抱える就職に関する不安のトップツーは、「お金」と「友達」だろう。慣れない土地で、友達もなく、一人孤独にカップ麺をすする。こういった生き方は、たとえ新入社員でなくとも想像したくないものである。

そうした課題を解決する一番の近道が社員寮というわけだ。家賃も安ければ、近くに同僚も住んでいる。そうした安心感があるからこそ、上京へのハードルも下がり、結果として地方学生の採用がしやすいという状況を作り出すことができるというわけだ。

社員寮そのものも、従来の雑多な印象のものではなく、現代人に合わせた「住みやすい環境」へと入念にカスタマイズされていっている。

各部屋にバス・トイレが付いた完全個室でプライベートは守られており、その一方でラウンジや食堂といった共有スペースも十分に用意されている。社員同士の交流が生まれる場所もあるが、一方では完全に交流を遮断することができるようにすることで、多様な価値観、多様な生き方を認め、実現できるのだ。

社員寮の活用で、組織力強化も視野に

また、社員の住みやすさだけがメリットになっているわけではない。伊藤忠商事が神奈川県横浜市の東急東横線日吉駅のすぐそばに建設した社員寮では、図書を並べた談話コーナーやバーカウンター、エレベーター脇のソファスペースなど、各階にコミュニケーションを弾ませられるスペースを設けている。いわば、シェアハウスのような造りと言えるだろう。

社員同士の交流が自然と生まれることで、人同士の繫がりを強化するのはもちろんのこと、縦割りの組織になり、狭まりがちな人間関係を広げる狙いがある。

いつの時代も、会社への帰属意識を高める一番の要因は人である。こうして社員同士が繋がる場を提供することで、定着率の向上、ひいてはより強固な組織の構築も実現されるのではないだろうか。

【オススメ記事】
優れたリーダーに求められる「5つの要素」とは?
こんなに多い日本の100年企業 100年続く秘訣とは?
日本建築、寝殿造り、書院造りなどから学ぶ日本の文化
経営者に資産管理会社を勧める3つの理由――相続を見据えて――
経営者なら知っておきたいESGの視点 長期的に企業価値を高める新しい判断基準

イベントスケジュール