中国アリババ創業者、ジャック・マーが電撃引退表明

(写真=Natali_ Mis/Shutterstock.com)

中国屈指のIT企業、中国の電子商取引大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)創業者、馬雲(ジャック・マー)会長が、自身の誕生日でもある9月10日に1年後の引退を表明し、世界中に驚きが走った。時代の寵児とも言えるスター経営者はいったいなぜ引退を決意したのだろうか。

アリババの時価総額は世界7位

アリババは、中国・浙江省杭州市に本社を置き、1999年3月に創業した。企業間電子商取引をサポートするサイト「阿里巴巴 (Alibaba.com)」のほか、電子商取引(EC)サイト「淘宝網 (Taobao.com)」などを運営。
アリババには、日本のソフトバンクが主要株主として出資している。今年8月末の企業時価総額は、世界7位の4,501億ドルにつけている。
日本人がもっとも馴染みのあるアリババのサービスと言えば、オンライン決済プラットフォーム「Alipay(アリペイ)」だろう。訪日中国人観光客の拡大に伴い、日本の小売りでもアリペイ決済を取り入れる店舗が増えた。
アリペイを運営するのはアリババ傘下の総合金融サービスの螞蟻金服(Ant Financial、アント・ファイナンシャル)で、同社は中国屈指のユニコーン企業として注目を集めている。

「絶対に諦めない」が座右の銘

マー氏の人生は決して順風満帆ではなかった。子どもの頃から英語には興味を抱いていたが、中国の大学入試にあたる全国普通高等学校招生入学考試(高考)は、2度受験したものの数学の成績が壊滅的だったという。いったんは大学進学を諦めて、三輪自動車の運転手になった。その後、出会った本の影響で再び大学進学を志した同氏は卒業後、1999年に妻と友人の3人でアリババを立ち上げる前に、英語教師の道に進んでいる。座右の銘は「永遠不放棄」(中国語で「絶対に諦めない」の意味)だという。
マー氏は現在50代半ばである。そろそろ後進に道を譲ることを考え始める年齢ではあるが、必ずしもすぐに引退しなければならないという年ではないだろう。
マー氏によると、マー氏は、取締役としては2020年までの任期を全うするものの、引退表明から1年後の2019年9月10日に現最高経営責任者(CEO)の張勇(ダニエル・チャン)氏に経営の指揮を譲り、自身は教育や慈善事業に注力するとしている。張勇氏は、11月11日の「独身の日セール」を考案するなど、才能ある経営者として知られる。
創業者が経営の一線から離れて慈善事業に注力する、というのは、米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏とも似ている。

企業は個人の素質に依存できない

マー氏が9月10日に公開した「手紙」には、経営者がリーダーとして常に意識すべき、後継者育成の重要性が述べられている。
その内容によると、今回の引退表明は同氏が10年かけて熟慮した結果だという。マー氏は、自ら後進に道を譲ることでアリババを「個人の資質に依存する体質から、組織や人材、企業文化を軸にした体制に変える」と述べている。
マー氏はアリババを創業したとき、中国から世界に誇れる企業を作り、(22世紀を迎えるまでの)102年間にわたって成長を続けるという志を立てた。しかし、いくら最新医学の力を以ても、102年にわたって辣腕を振るえる経営者などありえないだろう。
企業が永続的に一個人の力や才能に依存できない以上、「企業統治、社風、人材育成の3点をきちんと整備することで、企業は初めて継承と成長を実現できる」とマー氏は指摘している。

引き際にはさまざまな臆測も

マー氏の引退理由は、額面通り教育や慈善事業に専念したいのだろうというものから、中国政府首脳の関与を指摘するものまで、さまざまな臆測が流れている。たしかに、自由な言語空間を是とするインターネットカルチャーと中国の現行の政治体制は相容れない部分もあり、さまざまな場面や事業戦略でマー氏が経営に苦慮したであろうことは想像に難くない。突然に見える引退表明も、そうした配慮の一環かもしれない。
ただ、経営者としての引き際や、企業を末永く発展するための事業承継の考え方などは、多くの経営者たちがマー氏の「手紙」から学ぶべきものは多いだろう。

【オススメ記事】
優れたリーダーに求められる「5つの要素」とは?
こんなに多い日本の100年企業 100年続く秘訣とは?
地方オフィス市場の現状と展望・東京一極集中の危険性
経営者に資産管理会社を勧める3つの理由――相続を見据えて――
経営者なら知っておきたいESGの視点 長期的に企業価値を高める新しい判断基準

イベントスケジュール