採算悪化でどうなる?太陽光発電

(写真=Soonthorn Wongsaita/Shutterstock.com)

「環境に優しいクリーンなエネルギー」として、注目を浴びていた太陽光発電が曲がり角を迎えている。経済産業省はコスト抑制を目的に、事業者や家庭から買い取る太陽光発電の価格を大幅に抑制すると発表しているからだ。また、昨今相次ぐ自然災害では、山林を切り開いて設置した太陽光パネルの破損も報告されており、「環境に優しい」というイメージにも疑問符が付き始めた。

未稼働の太陽光発電システムの電力買い取り価格引き下げ

太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、固定価格買取制度(FIT)の下、国が売電価格を決めている。住宅用の太陽光発電については、FIT制度より以前の2009年11月1日から買い取りが始まった。
太陽光発電は、2011年の東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故や計画停電を受けたクリーンな電力への社会的要求の高まりに加え、2012年から始まったFITによって国に高い価格で電力を買い取ってもらえることで、近年拡大を遂げてきた。

再生可能エネルギーの固定買取制度自体は、世界の多くの国で取り入れられている一般的な手法だ。しかし、買取価格は世界的に引き下げられる傾向にあり、遅れて参入するほど利益を出しにくい構造にある。日本の政府も今後、太陽光発電の買い取り価格を減額する方針だ。まずは、2012年度から3年間に認定を受けた案件のうち、未稼働のものを対象とする。

FITが始まった当初は、買取価格が10キロワット以上で40円だったものが、2017年には21円まで値下がりした。しかし、当初は太陽光パネルの価格が高かったため、認可を受けても稼働せずに機器の値下がりを待つ事業者や、権利を転売する業者も現れた。こうした未稼働の業者が2019年4月以降に送電線につなぐよう申し込むと、2年前の価格が適用されることになる。

太陽光発電の「2019年問題」への備えを

また、太陽光発電には「2019年問題」も指摘されている。これは、2009年11月に開始した余剰電力の固定価格買い取り制度が10年目を迎え、固定買取期間10年間が満了する家庭が出てくるというものだ。来年だけで53万件、その後も毎年20万~30万件の契約が切れるとみられている。「契約満了後はタダで電気を取られてしまう」という情報も出回り始めているが、これまで高値で買い取られていた電気は、自宅で使うか市場価格で事業者に販売することになるだけだ。

ただ、電力の買取価格は大幅に引き下げられるとみられ、さらに将来は200万件を超える一般家庭が自家消費か、事業者との相対・自由契約を迫られる。市場の規模や、事業者・消費者間の知識や情報の非対称性から、こうした動きはおよそ現実的ではないという見方もある。消費者の側でも、蓄電池を導入するなど余った電気を効果的に活用できるよう対策をし、悪質なデマや悪質な便乗商法による詐欺にはまどわされないようにしたい。

自然災害などで廃棄される太陽光パネル、2040年度に80万トンも

一方、昨今の相次ぐ自然災害に伴い、太陽光パネルが損傷を受ける被害が増えている。集中豪雨で土砂崩れが起き、山野を切り開いて設置された大規模太陽光発電所が崩落したり、屋根に設置されたパネルが吹き飛ばされたり、豪雪の重みで損傷したりする。太陽光発電を導入するときに、「出力保証」「システム10年保証」といったうたい文句を見かけるが、自然災害による破損は別問題だ。

「太陽光発電パネルに災害補償をつける」「太陽光発電システムの補修費用が出る火災保険に加入する」といった対策が必要だ。また、災害時の備えとして自家発電用の太陽光パネルを取り付けたのに、災害時に使い物にならないのでは本末転倒だろう。しかし、こうした補償をつけたとしても、破損した太陽光パネルは廃棄処分となる。

モジュールによっては鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が使われている場合もあるだろう。さらに、浸水したり破損したりしても光が当たれば発電する可能性もあるため、破損したパネルの取り扱いには注意が必要だ。買い取り価格の低下で投資対象としての魅力がなくなり、多くのパネルが寿命を迎える2040年度には廃棄量が80万トンにもなるとの試算もある

しかし、ごみ問題については検討が足りていない。これでは、「環境に優しい」という宣伝文句にも疑問符がつく。太陽光発電は、今後の買い取り価格の動向もあわせて慎重な見極めが必要だ。

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