まるで「クレイジー・リッチ!」、東南アジア経済を牛耳るプラナカンとは

(写真=Evgeny Ermakov/Shutterstock.com)

2018年9月28日公開のハリウッド映画「クレイジー・リッチ!(原題Crazy Rich Asians)」は、主要キャストが全てアジア系であるにも関わらず全米で異例の大ヒットを遂げ、話題を呼んだ。日本でも、キャリアと恋の狭間で悩むアメリカ育ちの華人女性のシンデレラストーリーとして、好評を博しているようだ。このストーリーのカギを握るのは、「プラナカン(海峡華人)」と呼ばれる人々。今回は、東南アジア経済を牛耳るプラナカンについて見ていこう。

東南アジアで花開いたプラナカン文化

プラナカンとは、15世紀後半からマレーシアやシンガポールに渡ってきた中国系移民の子孫のことだ。彼らは現地の女性と結婚し、中国やマレー文化のみならず、当時東南アジアを支配していたヨーロッパの文化も取り入れた独自の生活スタイルを発展させた。現在プラナカンの文化を目の当たりにできるのは、シンガポールとマレーシアのマラッカやペナンなど。

あまり知られていないが、タイのプーケット島にもプラナカンスタイルのショップハウス(1階が店舗で2階が住居の長屋形式の住宅)が残っているという。また、インドネシアにもプラナカンのグループがある。プラナカン文化としてよく知られているのは、美しいパステルカラーの焼き物や住宅用のタイル、華麗なバティック染めや繊細なビーズ刺しゅうなどだ。

ペナンの歴史建築「チョン・ファッィー・マンション(通称ブルーマンション)」や、マラッカの「ババニョニャ・ヘリテージ・ミュージアム」といった豪華な建物も、その昔プラナカンの人々が暮らしていた住宅を改装したものである。プラナカンは幅広いビジネスネットワークによって、こうした工芸品を手に入れていた。プラナカンの収集品の中には日本の有田焼などもあり、また、「プラナカンタイル」として知られるカラフルなタイルの中には日本で製造されたものもある。

植民地エリートになったプラナカン、戦争で一変

現在、マレーシアやシンガポールで暮らす華人の多くは、植民地として同地を支配していたイギリス人によって、鉱山やプランテーションの労働者として連れてこられた人々の末裔だ。一方、プラナカンの人々は、こうした華人よりもより土着の文化に迎合し、地域コミュニティーへ同化していった集団だ。プラナカンは交易を主な生業としていたことから、中国語以外にも、英語やマレー語など複数の言語を操った。

また、ババ・マレーと呼ばれるマレー語を基本とし、多くの福建語の語彙を取り入れた独特の言葉も生まれた。プラナカンの中には経済的成功を収めた例も多い。出身地である中国よりも宗主国である英国との結びつきを重視し、労働者階級の新華人の集団とイギリス人の間に立ってエリート層として活躍したグループも見られる。

19世紀には、英国人やオランダの東インド会社と組み、香辛料貿易やプランテーション、スズ鉱山の開発にも関わった。中には、アヘン貿易や奴隷貿易に関与したこともあったようだ。豊かな経済力に裏打ちされたプラナカンたちは、1900年に海峡華人英国臣民協会(SCBA)を結成し、労働移民であるほかの華人系と自らを区別して、植民地エリートとして権勢を誇った。

しかし、日本軍によってマレーシア・シンガポールが占拠されると、プラナカン社会も激変した。彼らの富に目を付けた日本軍は、軍事費の一部を賄うための強制募金を実施し、財産を取り上げたのだ。また、英語を話すプラナカンを英国のスパイとみなし、粛正することもあったという。裕福だったプラナカンの生活は、戦争によって激変した。

日本になじみが深いプラナカンの末裔

日本で最もなじみのあるプラナカンの末裔といえば、シンガポールのリー・シェンロン首相だろう。リー首相の父で、シンガポールを建国したリー・クアンユー氏は1923年の生まれ。曽祖父の代にマレー半島に移住してきた客家系で、英語教育を受けた海峡華人のエリートだ。子どもの頃は、クアンユー(光耀)という中国語名のほかに、ハリー(Harry)という英語名も与えられていた。

ただ、クアンユー氏自身は、政治的なイメージを維持するために、華人系富裕層の印象が強い「プラナカン」の出自に触れることはなく、公式の場でハリーと呼ばれることも嫌っていたという。

今なお残るプラナカンネットワーク

このように、プラナカンの人々は自らの商才と人脈によって、東南アジアを中心に幅広いビジネスネットワークを繰り広げた。太平洋戦争によって没落したプラナカンも多かったものの、今なおその影響力は色濃く残っている。

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