労基法が改正、有給休暇の取得が義務に

(写真=wavebreakmedia/Shutterstock.com)

2019年4月から労基法が改正され、企業には社員の有給取得の義務が課される。人手不足の中、休暇取得が義務化されることで経営上の不安を感じている企業も多いかもしれない。今回の改正のポイントや企業がとるべき対策を見ていこう。

なぜ日本の有給消化率は世界最下位なのか

今回の改正の目的は、会社員が有給休暇を確実に取得できるようにすることだ。オンライン旅行大手のエクスペディアが2017年に世界30ヵ国を対象に行った調査によると、日本の有休消化率は2年連続 で世界最下位の50%となっている。しかし、ワースト2位の韓国は前年の53%から67%まで回復しており、海外と比べて日本の職場の「休めなさ」が浮き彫りだ。

一方、HR総研が実施した有給休暇の取得率の調査によると、有給休暇がほとんど消化されない「20%以下」が17%となっており、次いで「21%~40%」が21%、「41%~60%」は33%となっている。「81%~100%」にいたっては、わずか7%しかない。同調査で「有給の取得促進についての取り組みがある」と回答した企業は約6割。

ただし、300名以下の中小では45%のみが「ある」と回答しており、規模が小さい企業ほど取り組みが遅れがちのようだ。有給の取得が進まない理由としては、「業務量が多く、人員が不足している」(57%)が最多。「休んだ人の業務をカバーする体制がない」(41%)という体制上の欠点も上位になっている。しかし、体制上の問題のみならず、第2位の「従業員の計画的な年休取得に対する意識が薄い」(45%)という回答もある。

そのほか、「職場に取得しにくい雰囲気がある(上司や同僚もとっていないなど)」(39%)、「休まないことが評価される風土がある」(29%)など、「有給=悪」とする職場の文化的・風土的な問題もありそうだ。

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新制度では、年5日以上の年休計画付与が義務に

現行の制度では、6ヵ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対して、会社は勤続年数に応じた有給休暇を付与しなくてはならない。正社員のみならず、契約社員やパート社員も勤務日数・年数によっては同様だ。労働者は、会社側に対して「○月○日に休みます」というように休暇の時季を指定する。

ただし、日本の多くの企業では先のアンケートに見るような職場の文化的・風土的な問題で、労働者が休暇を申請しづらい雰囲気があったため、有給の取得が進まなかった。新制度では、年10日以上の有給を持つ従業員に対し、会社側は年5日分について、毎年時季を指定して休暇を与えなければいけないことになる。ただし、労働者が自ら年5日以上の有給を取得している場合や、計画的に5日以上の有給付与を行っている場合は、この義務からは解放される。

有給義務化、企業がとるべき対策は?

会社側がとるべき対策としてまず挙げられるのは、従業員に有給の消化を呼び掛けることだ。そのうえで、5日以上取得できていない従業員に対しては、5日以上の計画付与を検討することになる。このほか、労使の代表が合意すれば、会社側から特定の日を年休消化日とする計画年休制度の導入も可能だ。年末年始やお盆、ゴールデンウィークなど、業務の閑散期に合わせて計画年休を導入し、既存の休暇を延長することで、業務への支障を最小限にとどめつつ、義務をクリアすることも可能になる。

個別対応と計画年休のどちらが有効かは、ケースバイケースだ。有給の消化率が比較的高い企業であれば、個別対応がいいだろう。なぜなら、年休を自主的に5日以上とれていない従業員にのみ対応すればよいからだ。一方、部署全体や会社全体で年休の消化率が5日を下回っているという場合は、業務の閑散期や繁忙期を踏まえて、計画年休を検討するのがベターだ。

就労環境整備で従業員の引き留めを

義務を果たさなかった企業に対しては、30万円以下の罰金が科される。ただ、法的には罰せられなくても、売り手市場の今、休日が少ないなどといった「就労環境の悪さ」が従業員の離職を招く可能性は多いにある。2019年4月1日の施行を前に慌てることがないよう、就労環境の整備に向けて早急に手を打つべきだろう。

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