相続税法が40年ぶりに改正、相続問題はどう変わる?

(写真=goodluz/Shutterstock.com)

1980年から40年近く見直しがされてこなかった民法の相続法が、2018年に改正された。「配偶者居住権」が認められるほか、「長男の嫁」など相続人でない親族が介護に貢献した場合の金銭請求が可能になるなど、大きく改正された新しい相続税法を見ていこう。

「配偶者居住権」の設定が柱のひとつ

法務省は今回の改正について、「社会の高齢化がさらに進展し、相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため、その保護の必要性が高まっていました」と説明している。そうした方針が鮮明に打ち出されているのが、変更点の柱のひとつとなっている「配偶者居住権」だ。これは、相続開始時に配偶者が被相続人の所有する(していた)建物に住んでいた場合に、建物を無償で使用することができる権利だ。終身もしくは一定期間にわたって権利は保証される。

例えば、配偶者と子ども1人が相続人で、相続財産が自宅(3,000万円)と預貯金4,000万円の場合、1人あたりの相続額は7,000万円の2分の1ずつで3,500万円。配偶者が自宅を相続した場合には、預貯金500万円しか受け取れないことになる。だが、改正後は自宅の評価を「居住権」と「所有権」に分けることが可能だ。「居住権」を1,500万円、「所有権」を1,500万円とした場合、「居住権」を1,500万円分の居住権をもらっても、預貯金2,000万円を受け取れることになる。

こうして、配偶者は自宅に住み続けつつ、預貯金など他の資産も多く受け取って生活を安定させることができるのだ。また、婚姻生活が20年以上にわたる場合、生前に贈与、もしくは遺贈(死亡時に贈与)された自宅は相続の対象から外されることになった。例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合。相続財産が自宅(3,000万円)と預貯金4,000万円だとしたらどうだろう。

法改正前は配偶者が7,000万円2分の1の3,500万円、子どもがそれぞれ4分の1で1,750万円ずつ相続する。それが、自宅を配偶者に贈与しておけば相続財産は預貯金の4,000万円のみになり、配偶者が2分の1の2,000万円、子どもが4分の1の1,000万円ずつという相続分になるのだ。

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介護に協力した「嫁」にも金銭的見返り

このほか、相続人ではない親族にも介護などでの寄与に応じて金銭の請求権が認められたことも注目点だ。これまで、相続人でない「長男の嫁」などが無償で故人の介護に尽力してきたにも関わらず、「嫁の務め」とみなされてしまい「遺産相続では蚊帳の外に置かれる」というケースが多く見られた。今回の改正では、こうした場合の処遇についても、金銭で見返りを求めることが可能になる。

これも、生前の介護問題が深刻化しているという意味で、高齢化社会に伴う改正のひとつだろう。さらに、遺産相続が決着する前の現金の仮払いも認められることになる。これまで、故人が残した遺産は、遺産分割が完了するまで相続人単独での引き出しが認められなかった。そのため、相続問題がもめて何年もかかるようなケースでは、残された配偶者が生活費に困窮するようなこともあったのだ。今回の改正では、一定額までの仮払いが認められることになり、葬儀代や生活費に充てることが可能になる。

財産目録の作成負担を軽減

資産家にとっては、財産目録の作成をパソコンで行えるようになったことも朗報だ。今後は自筆の遺言にパソコンで作成した目録や通帳コピーを添えることができるようになる。これまで、有価証券の種類によっては証券番号まで記す必要があったり、不動産も一筆ごとに面積や所在地まで自筆する必要があったりと、なにかと負担が大きかった。

これらをパソコンで作成し、署名と押印するのみでOKとなれば、遺言状の作成負担が軽減される。ただし、内容の改ざんや、「遺言書の日付やフォント、体裁が統一されていない」などの理由で遺言書の無効を訴える親族が現れるケースなど、パソコン作成ならではの問題が発生することも懸念されるため、注意が必要だ。

相続税は別問題

今回の改正では、あくまで「民法」での相続法改正であり、税法上の相続税の問題は別である点にも注意が必要だ。相続税は配偶者控除の部分が大きいため、「配偶者居住権」や自宅の贈与を活用した場合、配偶者の死後に次世代が「二次相続」する場合の相続税が跳ね上がることも考えられる。どういった形での相続が最適か、あらかじめ専門家に確認する必要があるだろう。

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