UBER撤退!東南アジアを席巻する配車アプリ「GRAB」

taxi

(写真=Tom Wang/Shutterstock.com)


世界中で存在感を高めるアプリを利用した配車サービス。日本では自家用車を利用した配車サービスは解禁されていないが、米国の「UBER(ウーバー)」や「Lyft(リフト)」、中国の「滴滴出行(ディディチューシン)」、インドネシアのバイクタクシー配車サービス「GOJEK(ゴジェック)」など、海外では次々とスタートアップ企業が勃興している。

東南アジアで圧倒的な存在感を放つのが、マレーシア生まれ、シンガポール育ちの配車サービス「GRAB(グラブ)」だ。

「タクシーを安全に利用できるアプリを」がきっかけ

「GRAB」を創業したアンソニー・タン氏はマレーシア生まれ。同氏は、マレーシアで日産車の総代理店を務めるタンチョン・モーターの御曹司として生まれた。米ハーバード大にMBA留学中、同郷の同級生タン・ホーイリン(Tan Hooi Ling)氏とともに、GRABのベースとなるアプリを使った配車サービス事業を考案した。

タン・ホーイリン氏のインタビューによると、同氏がコンサルティングファームで働いていたころ、深夜におよぶ激務を終えてタクシーで帰宅すると、娘の身を案じた母が必ず待っていたという。タクシー運転手による強盗や強姦などが頻発する東南アジアにおいて、タクシーは安全な乗り物として認識されていなかったのだ。「(母親に負担をかけ)とても心苦しく感じた」と同氏は語る。

そこで両氏は、タクシーの配車手配だけでなくGPSで走行状況をトラッキングできるアプリとして「MyTeksi(マイタクシ)」を創業。(Teksiはマレー語のつづりで「Taxi(タクシー)」の意味)
2014年には本拠をマレーシアからシンガポールに移した。2016年にはマレーシアのMyTeksi事業と他地域のGrab Taxi事業を統合し、ブランド名を「Grab」で統一している。

UBER撤退で東南アジア「一強」に、事業範囲を拡大

Grabの快進撃は配車サービスにとどまらない。2017年にはシンガポールで電子決済事業の「GrabPay」を開始した。

さらに2018年には、Grab最大のライバルだった米系配車サービスの「UBER」が東南アジア事業からの撤退を表明。GRABは、同社から「UBER Eats(ウーバー・イーツ)」事業を引き継ぎ、フードデリバリー「Grab food」にも乗り出した。
Grabの進出国はマレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、カンボジアに広がり、宅配事業のGrabデリバリーなど事業範囲も拡大している。

Grabの強みは、一貫したプラットフォームだ。ユーザーはひとつのアプリを立ち上げるだけで、配車サービスからQR決済までGRABのあらゆるサービスを利用できる。(UBER Eatsを引き継いだGrab foodだけは別アプリの立ち上げが必要だが、ユーザー情報はリンクされている)

また、運転手とのチャット機能も出色だ。配車を予約した時点で運転手とチャットや電話で会話ができるようになり、「渋滞で遅れている」「待ち合わせ場所がわからない」といったリアルタイムでのやりとりが可能。

アンソニー・タン氏によると、東南アジアのユーザー嗜好を研究して取り入れた機能なのだという。こうして地元市場の嗜好を研究し尽くし、GrabはUBERを撤退に追い込んだ。

最近では、GrabPayに日本の「モバイルSuica」のような自動チャージ機能が実装された。ユーザーはアプリとクレジットカードをリンクさせておけば、残高を気にせずともシームレスにあらゆるサービスが活用できる。さらにサービス利用ごとにポイントが貯まり、ポイント数に応じてGrabの割引クーポンと引き換えられるほか、提携の飲食店やECでもサービスを受けられる。

また、ビジネスユーザーとして注目したいのは、Grab経由で予約した配車サービスの領収書が全てEメール経由で自動送付されるという点だ。乗車場所と下車した場所、金額、日付、利用時刻がすべて記載されているので、経費精算の際にとても助かる。

日本企業も続々出資

Grabの躍進には日本企業も注目している。いち早く行動に移したのはソフトバンクで、2014年に2億5,000万ドルを出資。その後も出資を続けている。

また、2016年にはホンダが、2017年には豊田通商が出資しトヨタ自動車とも提携した。2018年12月にはヤマハもインドネシアを中心としたGrabの二輪車配車事業で提携している。
若年人口が多く、世界の成長ドライバーとして期待される東南アジア。Grabは配車サービスを超え、ライフラインとして人々の生活を掌握しつつあるのだ。

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