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金融緩和を継続する日銀、デフレ脱却阻む5つの要因とは?


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(写真=PIXTA)

日銀が「異次元の量的緩和」を現状のまま継続!―デフレ脱却の目標は2016年前半から後半へ再延長

 日本銀行は、10月30日に開催された金融政策決定会合で、これまでの量的緩和を現状のまま継続すると発表した。アベノミクス「3本の矢」の1本である「大胆な金融政策」の一環として始まった日銀の「質的・量的金融緩和」は、長年続いたデフレ経済からの脱却を目指している。2年で年2%のインフレ目標を掲げていたのであるが、2016年前半としていた目標達成時期を今回「後半」にまで再延長した。

 年間100兆~150兆円という規模で大量の「国債」を買い入れる日銀の量的緩和は、同時に「ETF」や「REIT」といったリスク商品を市場から購入することで、市中にマネーを大量に放出させている。大量の資金を供給することで、世の中全体に「インフレ期待」を浸透させて個人の消費意欲を刺激させるシナリオであった。

 年間100兆円を超す緩和マネーをばらまき、さらに追加の量的緩和政策、いわゆる「黒田バズーカ」を2度も放ったのに物価上昇率は1%どころか0%前後を推移している。日銀は原油価格の下落が主たる原因であるとして、生鮮食品とエネルギー関連を除いた「日銀独自の消費者物価指数」を算出。こちらのデータでは年1%程度の堅調なインフレが続いていると主張している。とはいえ、国民にインフレ期待をもたらすには程遠い現実である。

 GDP成長率も2015年4-6月期は実質-0.3%とマイナスに転じ、7-9月期も実質マイナスとなる恐れがある。2期連続のマイナス成長は、景気回復どころか「リセッション(景気後退)」を意味する。

 株式市場など金融関係者は、日銀によるさらなる量的緩和、いわゆる「黒田バズーカ第3弾」を期待している。ETFやREITを購入する資金も限界に近づいており、さらなる追加緩和は実施したいところであるが、これ以上の量的緩和を実施しても大きな効果が望めないのも現実である。かといって、効果がほとんど見えない現段階で、量的緩和政策をやめるわけにもいかない。出口戦略に向かうには、まだまだ道は遠い。まさに八方ふさがりの状況が続く。

大胆な金融緩和、インフレ期待でデフレ脱却なるか?―世界中に蔓延る過剰流動性は何をもたらすのか

 日銀が進めてきた質的・量的金融緩和政策は、本当に日本経済を復活させてくれるのであろうか。周知のように、現在日銀が実施している金融政策にはモデルがある。米国のFRB(連邦準備制度理事会)による「QE(量的金融緩和政策)」だ。米国は3回実施するなど、そのスケールは型破りであった。最近になって雇用統計やインフレ率などが回復し、量的緩和を終了。あとはゼロ金利からの脱却のみであるが、現時点では雇用情勢などに不安があり金利引き上げまでに至っていない。

 一方の日本は、FRBに追随する形で異次元の量的緩和をこれまで2回実施した。量的緩和スタート以降、新規発行市場の日本国債の7割は日銀が買い入れている状態で、現在の日本の債券市場は市場メカニズムが一切機能しない状態になっていると言っていい。

 健全だった市場メカニズムが日銀の金融政策によって大きく歪められているのは、債券市場だけではない。ETFやREITを爆買いする量的緩和政策は、株式市場や不動産市場をも歪めつつある。それだけ健全な市場メカニズムを歪めてしまう「劇薬」ということである。

 米国、日本に続いて欧州中央銀行(ECB)も量的緩和をスタートさせ、いまや世界中の先進国から緩和マネーが金融市場に放出される時代になった。緩和マネーは、世界の金融市場に過剰流動性をもたらし、原油などの資源価格を高騰させ新興国にバブルをもたらした。

 その結果、原油などの資源価格が暴落。新興国通貨も暴落して、その多くが輸入インフレに苦しむようになる。米国が始めた非伝統的量的緩和は米国経済は救うものの、それ以外の新興国や資源産出国の経済をガタガタにしてしまうのかもしれない。中国の景気減速がその象徴ともいえる。

デフレ脱却できない5つの理由?―マイナス金利など、残りカードはもはや残りわずか?

 金融市場が待ち焦がれる黒田バズーカ第3弾は、そう簡単には炸裂されそうもない。理由は簡単で、効果がないからである。量的緩和によって円安が進み、自動車など輸出比率の高い国際企業の業績は上昇したものの、実質賃金は上がらず非正規社員の割合が4割を超えるなど、個人消費の活性化には程遠い。景気回復を実感できる国民は少数派である。異次元の量的緩和でなぜデフレ脱却ができないのか。その理由は、大きく分けて5つある。

1.インフレ期待では個人消費を刺激できない

 日本国民の多くは、将来的に少子高齢化がより深刻となり、1000兆円を超える財政赤字を抱える政府のツケを払わされると覚悟している。とても消費を増やそうというマインドにはならない。少子高齢化や財政赤字などの抜本的な解決策が提示されなければ、国民の消費は冷えたままである。

2.カギを握る「実質賃金上昇」「雇用拡大」

 FRBの判断もこの2点を重視しているが、デフレ脱却には賃金上昇と雇用拡大が不可欠。とりわけ正社員の雇用拡大がなければ、インフレ期待による消費マインドには結びつかない。実質賃金の上昇率はマイナスのままで、正社員も減少を続けている。

3.異次元の量的緩和は世界に流れ、国内には還流しない

 量的緩和によって市中に放出された緩和マネーは、本来なら銀行から企業に流れて設備投資に回される。ところが、企業は354兆円(法人企業統計、2014年度)という莫大な内部留保を貯めこんだままである。その結果、緩和マネーは金融市場に流れヘッジファンドやプライベートエクイティなどによって海外に投資され、世界のどこかでミニバブルを作る。あるいは、日銀内の当座預金に積み上がっていくだけである。日本の景気回復には機能しない。

4.本当に必要なのは構造改革と規制緩和

 現在の日本経済に本当に必要なのは、大胆な規制緩和と構造改革であってマネーではない。政府や大企業が抱える利権を解消させるような大胆な規制緩和が必要であり、日銀の量的緩和ではすでに限界に達している。つまり、政策そのものが間違いである。

5.残るはマイナス金利だが、ハードルが高い

 日銀は、実はもう一つ画期的な切り札を残している。ECBが実施している「マイナス金利」の導入である。マイナス金利は、お金を預けたほうが利息を払うもの。まさに究極の量的緩和であるが、こうした非伝統的な金融緩和にまで踏み込めるのか。その効果も当初期待したほどには上げられそうもなく、ハードルが高い。デフレ脱却の足かせのひとつになっている。

 金融市場が黒田バズーカ第3弾を待望するのは株高円安を望んでいるからであるが、確かに一時的な株高円安はあるかもしれない。しかし、肝心のデフレ脱却はまだまだ遠そうである。

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