地方での人材確保を目的として「最低賃金の統一化」の動きが始動

(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

少子高齢化が進む中、国内の労働力不足が顕著になりつつある。とくに、過疎化が進む地方では喫緊の課題だ。また、国内の労働力不足を補うために、外国人留学生や外国人研修生を労働力として頼る企業も増えているが、急激な外国人労働者の増加は社会問題を引き起こす可能性も指摘されている。そうした中、地方での人材確保を目的に動き始めているのが「最低賃金の統一化」だ。

地域間で月3万円超の格差も、外国人労働者も高賃金求め都会へ向かう

日本では、都道府県ごとに最低賃金(時給額)が定められている。平成30年度の地域別最低賃金額のうち、最高額は東京都の985円。一方、最低額は鹿児島県の761円と、224円の差がある。つまり、1日8時間労働したとすると、1日当たりで1,700円あまり、1カ月20日出勤すれば約3万4,000円の差が生まれるということだ。
こうした中、地方間での最低賃金の格差を解消するため、自民党の有志議員らが最低賃金額を全国一律にすることを目指す議員連盟を立ち上げるという。都会と地方の賃金格差が広がれば、地元の若者ばかりでなく、地方企業で就労する外国人労働者の確保も難しくなると指摘されているためだ。
先ごろの外国人労働者の受け入れ拡大に向けた在留資格の創設をめぐる議論で、外国人研修生の失踪が問題視された。議論の中で指摘されたのは、「失踪した研修生の多くが地方で働いており、より高い賃金を求めて都会での仕事を希望する」ということ。日本人の若者が減少する中で、地方企業は外国人への労働力依存を強めており、人材の引き留めは深刻な課題だ。

都会の繁栄は地方あってこそ、地域別最低賃金は妥当か?

全国の最低賃金を統一し、すべての都道府県が東京並みの水準となれば、地方企業や全国展開するチェーン店などへの負担が増える可能性がある。
今や、全国で物流網が整備され、地方でも都会と同じチェーン店が立ち並び、物価差もそれほどないだろう。むしろ、競争原理の働きにくい地方のほうが一部の物価は高いことも考えられる。
一方で、都会は不動産価格が高いため、生活費のうちの住居費も必然的に高くなる。住居費の上乗せ分も考慮すれば、都会の最低賃金が高いのは当然、という考え方もある。
ただ、最低賃金額は物価のみで決まるわけではない。地域の平均賃金と企業の賃金支払い能力も考慮される。
一般的に、地方企業は主に中間財を製造し、地方企業から部品・材料を調達して最終製品を販売する企業は大都市に多く存在する。また、金融・保険、情報通信、サービス業といったマージンを確保しやすい業種も、大都市に集積しやすい。これらの企業は賃金支払い能力も高いため、都会の平均賃金が高くなる傾向にある。
しかし、都会の繁栄は地方の水・電力のインフラ、さらに流入する労働力によって支えられてきたことも事実だ。人口の一極集中や地方の疲弊は、ひいては日本全体の衰退にもつながるのだ。
最低賃金のあり方は、単なる企業努力だけでなく、大企業と中小企業の取引慣行のありかたの見直し、企業の生産性を上げて「賃金支払い能力=稼ぐ力」を高めること、国全体のグランドデザインも含めて検討する必要があるだろう。

地域別最低賃金制度は世界の常識ではない

最低賃金を地方の水準にすれば都会に住む人が立ち行かなくなり、一方ですべての都道府県が東京並みの水準になれば地方企業が打撃を受けるという声が上がる。ただ、地域を問わず、最低賃金は最低限のセーフティネット(生活保障)という考え方もある。欧米ではフランスやドイツのように、最低賃金を全国で統一している国もある。さらにアジア圏でもマレーシアは今年1月より、国内の最低賃金を見直して全国一律としている。
政府は「最低賃金1,000円」の実現を目標に掲げている。東京都や神奈川県は、来年にも達成する見通しが出てきた。地域別最低賃金制度は、決して世界共通ではないことも念頭に置いておきたい。

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