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法人の実効税率引き下げが意味するもの


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「アベノミクス」と税制改正

 企業経営者にとって頭痛の種となるのが税金対策である。納税するお金はたとえ1円でも節税したいというのが、企業規模の大小に関係なく経営者全員の切実な願いだろう。したがって、どの経営者も節税対策に長けた有能な税理士を必要としている。

 ただし、いくら税理士が腕利きであっても、その税理士と対等にわたり合えるくらいの税金に関する知識が経営者には要求される。税理士はあくまでも税金の専門家としての職責を果たすだけであって、税理士が経営者の代役をすることはできないからである。

 日本の法人税法は、各時代の経済状況の変化に対応するために適宜改正されており、企業経営者の耳目をひく大改正もたびたび実行されている。政府は、2014年の12月に翌年度からの法人に課せられる実効税率の引き下げを決定し、2015年から段階的に実施されることとなった。

 約3年間の野党時代を経て2012年12月に政権に返り咲いた自民党は、長引くデフレ不況の脱却の策として安倍首相の指揮のもと、金融緩和政策を柱とするいわゆる「アベノミクス」を実行した。

 円高とデフレ不況を打破する目的のアベノミクスは株価の上昇へとつながり、一定の評価を得ている。政府は金融政策と同時に税制改革の必要性を訴え、賃金のアップに直結する法人への実効税率の引き下げに踏み切った。

引き下げられる税率の数値

 法人に対する実効税率とは、法人税・住民税・事業税のうち、利益にかかる実質的な税金負担比率のことで、その計算式は「1+事業税率」を分母とし、「法人税率×(1+住民税率)+事業税率」を分子とした数式で算出される。

 この実効税率を引き下げることによって、企業が従業員の昇給に回せるだけの利益分を確保できるようになり、景気回復の起爆剤となることが期待されている。しかし、アベノミクスによって徐々に景気回復の兆しが見えてきたものの、2014年4月に実施された消費税率アップによって、再び消費が停滞傾向に逆戻りしたのだ。

 そこで政府は、3党合意で決定していた第2段階の消費税10パーセントを2017年4月に2年先送りにし、その前に確実な景気の回復を図るという経済政策をとった。

 今回の改正で法人の実効税率は、まず2015年度にそれまでの34.62パーセントから2.51パーセント引き下げられ32.11パーセントに、その後段階的に下がっていき、2016年度には3.29パーセント引き下げられ最終的に31.33パーセントにするという内容になっている。

 これによって、各法人は利益が多ければ多いほど、収める税金がそれまでよりも確実に少なくなる。株安・円高の影響で事業不振に陥っていた企業にとっては、株高・円安効果で利益を確保し、実効税率も下がることによって、かなり大きなメリットを享受できることとなりそうだ。

改正税率に基づく経営計画を

 もともとEU諸国に比べて高いと指摘されていた日本の法人実効税率が引き下げられ、消費税などの付加価値税が上がることで、今回の税制改革は高福祉社会で知られるヨーロッパ先進諸国の税体系により近づいたともいえる。

 企業経営者としては、今後公表されていく段階的税率引き下げの具体的な工程表を基にして、自社の決算期における利益額と納税額そして人件費との相関をシミュレーションし、今後1年から2年後までの短期の収支計画を策定しておく必要がある。

 政府による税率改正の目的が従業員の賃金アップにあるのならば、人材育成とES(従業員満足度)の向上に経費を割くよい機会かもしれない。

 冒頭に述べたように、顧問税理士は節税対策のアドバイスはしてくれるが、経営者の代役をすることはできない。改正税率と自社の収支バランスに落とし込んで経営戦略を立てるのは、経営者の重要な仕事である。引き下げられる実効税率を基にした自社の経営計画を、いま一度練り直してみよう。

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