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経営者なら知っておきたいESGの視点 長期的に企業価値を高める新しい判断基準


ESG
(写真=PIXTA)

 最近になって「ESG関連銘柄」という言葉をよく聞くようになった。安倍首相がニューヨークで開催された国連サミットで、世界最大の年金積立基金「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が、国連の「PRI(責任投資原則)」に署名したことを明らかにしたためだ。責任投資原則というのは、長期にわたる継続的な収益を実現するための投資行動の原則を示したものだ。とりわけ重視されるのが投資にあたっての「ESG」への配慮だ。

 企業経営者にとって、今後ますます重視しなければならなくなった「ESG」とは何なのか。企業経営者にとって知っておきたいESGの基礎知識、そしてESGの視点から見た経営戦略を紹介する。

ESGとは何か?

 ESGとは、「Environmental(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治:ガバナンス)」の3つの頭文字をとったものだ。企業にとって、それぞれの分野の課題にきちんと対応していくことが健全な企業の発展や成長の原動力となり、最終的には社会全体の持続可能な形成に役立つことを示した「投資の判断基準」のひとつと考えていい。極端な言い方をすると、ESGへの取り組みを評価された企業の株価は上昇し、回り回って地球環境問題や社会が抱える様々な課題の解決や改善に役立つという考え方だ。

 たとえば、通常の株式投資では企業の財務状況や株価の割安感、チャートの動きなどを判断基準として投資する。しかし、ESG投資の基準では、企業の環境問題への取り組み方をはじめとして株主や顧客、従業員、地域社会など利害関係者に対して、いかに「企業の社会的責任(CSR)」を果たしているのか、そして企業のガバナンスがきちんとできているのかが、トータルで判断される。

 企業業績は抜群で急成長を遂げていても、顧客との間に訴訟を数多く抱えていたり、従業員とのトラブルが絶えなかったり、地域社会との関係が良好ではなかったりする企業は、ESG投資という面では低い評価となる。

 GPIFが、ESG投資を重視するPRIに署名したということは、ESG投資で低く評価されるような企業の株は購入してもらえないということになる。近年、飲食業界や小売業界で、過酷な労働を強いるブラック企業が話題になっているが、そうした企業は投資対象から除外されてしまうことになるわけだ。

統一基準を設けて「ESG銘柄」を公表した東京証券取引所

 ESG投資への取り組みは、環境庁や証券取引所でも積極的に行われているのだ。

 環境庁は、2011年10月に金融機関と「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」を定めて、ESGに配慮した投資行動を確認している。

 証券取引所では、東京証券取引所が2012年5月に「ESGのスコアリング基準」を発表し、そのスコアリングに沿って「ESG銘柄」を公表。SRI調査会社(グットバンカー)と共同で策定したものだが、業種別の特性などを配慮したうえで、環境面では製品開発分野で環境破壊をどの程度軽減する努力をしているのかなどが評価される。

 社会面では、従業員への対応や社会貢献活動、顧客や調達先への対応などについて評価基準を設け、ガバナンス面でも企業統治や法令遵守の対応について、全業種に当てはまる統一基準の策定を行っている。

 各項目を合算して、ESG総合スコアを策定。東証17業種の大型株、中小型株に分けて、それぞれの上位企業をリストアップしたものが発表されている。

持続可能な経営を実現させるESG視点の経営戦略

 実際に、どんな企業が選択されているのかというと、たとえば電気自動車「リーフ」の開発に当たって充電インフラの整備などに着手し、環境、安全、社員などの分野で「CSR重点8分野」を定めてESGを推進する「日産自動車」がそのひとつだ。高品質な水処理膜や炭素繊維の開発、太陽電池や燃料電池部材の開発など、地球環境問題の解決を目指した製品開発などに積極的な「東レ」などもリストアップされている。

 こうしたESGに配慮した経営戦略が、今後ますます求められることになるのは間違いないだろう。とりわけ上場企業の場合は、GPIFなどの機関投資家が厳しい目でESGの進捗状況を判断して、株価形成にも大きな影響をもたらすことになる。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)で発覚した排ガスデータ不正事件などは、ESGに関してありとあらゆる分野で反する経営となっており、企業経営の根幹を転換していく必要があるのかもしれない。

 では、ESGで優れた評価を得るためにはどういう経営戦略を立てていけばいいのか。簡単にまとめると次のようなポイントが考えられる。

①経営者自身がESGに対して深い理解をもち、意識改革をすること。
②ESG対応について、包括的に対処する専門部署を設けること。
③外部からのESG評価を随時収集して情報収集すること。

 どんなにESGに力を入れても、短期的に見ると売上増とか収益アップなど業績面での貢献はほとんどないかもしれない。とはいえ、何もしなければ致命的なトラブルに対応できない可能性がある。

 実際に、ブラック企業といった噂が立つだけで、現在ではSNSを通して世界中に拡散されてしまう。企業のブランドイメージは形成するのに何十年もかかるが、崩壊するときは一瞬で消滅すると言われる。ESGの重要性と必要性を経営者は認識すべきだろう。

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