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法人実効税率の引き下げ方針 企業にどのくらいの影響があるのか?


woman hand with pen and business report
(写真=PIXTA)

 自民党の税制調査会は2015年12月16日の総会で、2016年度税制改正大綱を了承、法人実効税率を2016年度に29.97%(現行32.11%)に引き下げるとした。2018年度には29・74%とする方針も同時に打ち出されている。今回の法人実効税率の引き下げは、企業にどのような影響を与えるのだろうか。

法人実効税率とは

 法人実効税率とは、法人が利益に対して実質的に負担する所得税率を指す。法人の所得にかかる税金としては、法人税のほか、地方法人税、法人住民税、事業税(地方法人特別税を含む)があり、それぞれの税率をすべて合わせたものが「表面税率」である。

 この表面税率は、実際に納税する額を算定するのに用いられるが、このうち事業税は翌期の損金に算入されるため、翌期の税額を減らすことにつながる。しかしこれは前年の所得に対する軽減効果といえるため、実質的な負担を示す「実効税率」を計算するには、その軽減効果を加味しなければならない。また、「法人税率」と「法人実効税率」は、言葉が似ており間違いやすいが、法人税率は法人実効税率のひとつの構成要素にすぎない。言葉ではわかりにくいが、計算式で表すと次のようになる。

【表面税率】
 表面税率=法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率

【法人実効税率】
 実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)/(1+事業税率)

 法人実効税率は表面税率を「1+事業税率」で割っているということがお分かりいただけるかと思う。この「1+事業税率」で割る部分については、複雑な計算式を展開する必要があるため説明は省略するが、要は、事業税が翌期に損金になる分をここで調整しているのだ。

 それぞれの項目について簡単に説明したい。法人税は、法人の所得に対して課される国税であり、課税所得に法人税率を乗じて計算される。地方法人税は、地域間の財源の偏りを解消し、地方交付税の財源を確保する目的で2014年度に創設された国税であり、法人税額に地方法人税率を乗じて計算される。住民税は、事業所が所在する自治体により課される税金である。制限税率と標準税率が定められているが、これは各自治体により異なる。事業税は事業に対してかかる税金で、都道府県に納税するものである。

 なお、住民税には都道府県に納める道府県民税と市区町村に納める市町村民税の2つがあり、事業税率は事業税に加え、地方法人特別税を含めた計算となる。

 また、法人税と事業税は課税所得に対して税率を乗じるのに対し、地方法人税と住民税は法人税額に乗じて計算されるため、計算式では法人税率に括弧で乗じる形になっている。

法人実効税率引き下げの意図

 今回、アベノミクスの一環として実効税率の引き下げが掲げられているのには、これにより経済成長を促したいとの狙いがあるためと思われる。法人実効税率が高いままでは日本企業の利益が圧縮され設備投資などができず、コスト面でも国際競争で勝ち残れない。また、日本企業の海外転出や海外企業の日本進出が滞るなどの問題もある。

 ここで、法人の7割は赤字企業であり、法人税を納税しているのは3割程度の法人だという事実をお知らせしたい。つまり、法人実効税率の減税により恩恵を受けるのは儲かっている3割の企業のみということになる。残る7割には実効税率減税の恩恵がないばかりか、政府は外形標準課税の拡大により赤字法人への課税を強化しようとしている。このように見ていくと、法人実効税率の引き下げそのものによる企業の影響は限定的であるが、それに伴う外形標準課税の強化による企業への影響は大きいものとなるだろう。

 法人実効税率の引き下げによって海外企業などの日本進出が促進されれば、雇用創出や地域活性化は期待できるかもしれないが、規制の多さや言語などの問題は残されており、たやすいものとは言えない。また、企業の利益が上がったとしても設備投資に回されるとは必ずしも言い切れないのではないか。したがって、実効税率の引き下げによる経済効果が表れるのには相当時間がかかるということが予想できる。

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